【写真】『白雪姫』場面写真
原作自体は、ディズニーではないため、「白雪姫」を題材とした作品は多く制作されてきた。例えば『スノーホワイト』『白雪姫と鏡の女王』(どちらも2012)といった作品がある。
ディズニーの実写化ラッシュの中で、当然ながら『白雪姫』も企画が浮上してきたものの、シンプルな内容がゆえに、「シンデレラ」や「美女と野獣」、「アラジン」などと比べて、現代性を落とし込むことが難しい作品ということから、制作は後回しにされてきた。
そんな『白雪姫』が、いよいよ制作されるとなったわけだが、一方で批判的な声が続出。それは主演にレイチェル・ゼグラーが抜擢されたからだ。レイチェルはラテン系ということもあり、『リトル・マーメイド』(2023)に続き、ポリコレだと騒がれたのだ。国によっては、「白雪姫」が肌の白い女性を意味していることからもイメージと違うと批判されてしまうことに。批判を少しでも和らげるために、衣装は原作アニメに寄せたものとしていたが、さらにレイチェルの発言の一部が切り取って拡散されたことなども重なって、前評判は最悪だった。
確かに物語はシンプルであり、現代性を落とし込むことにも苦戦した様子が全編に滲み出ている。そこはグレタ・ガーウィグの脚本力をもってしても難しかったのか、『バービー』(2023)のように、シンプル・ガールズムービーになりそうな作品を180度変換させる冒険は、ディズニーというフィールドではできなかったようだ。そしてなぜか、ノンクレジット扱いになってしまっている。
共同脚本には、エリン・クレシダ・ウィルソンも名を連ねており、こちらも『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』(2014)など、切れ味の鋭い作品を手掛けてきている脚本家という点で期待されていたが、力量が発揮できなかったのか、もしくはそういう環境ではなかったのか、ストーリーテリングの部分で粗が目立ってしまう。
ただ、そんななかでも、レイチェルの歌唱力は今作独自の魅力を一層高めていると言っても過言ではない。先行リリースされた「Waiting On A Wish」含め、『グレイテスト・ショーマン』(2017)や『ラ・ラ・ランド』(2017)の作曲家コンビとして知られるパセク&ポールが手掛けた楽曲の数々を見事に歌いあげている。様々な批判があったとはいえ、ベストキャスティングだと歌唱力が証明してくれたのだ。
レイチェルといえば、スティーヴン・スピルバーグが再映画化した『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)で主役を演じたことも記憶に新しいが、次に出演した『ハンガー・ゲーム0』(2023)では、アーティストとしてサウンドラトックに参加。Netflixのアニメ映画『エイリアンと魔法の絆』(2024)でも見事な歌唱力を披露している。
一方、舞台としては、2024年に「ロミオとジュリエット」のリバイバル上演でジュリエット役に抜擢され、作中歌の「Man Of The House」はシングルカットされるなど、ゆく先々で演技力に加え、歌唱力の高さが評価されているのだから、ミュージカルとなれば、一定以上のクオリティは保証できるわけだ。
さらに注目してもらいたいのは、ガル・ガドットである。元ミス・イスラエルであり、DCEU(DCエクステンデット・ユニバース)においては、ワンダーウーマン役として、幅広い世代に知られている女優。
ガルがミュージカルというイメージはあまりないかもしれないが、『シュガー・ラッシュ:オンライン』(2018)では、少しだけ歌うシーンがある。もっと遡ると、2008年に子ども向けミュージカル舞台「Tfos Ta’Festigal」に出演経験もあったりと、全く歌ったことがないわけではないが、ガッツリとしたミュージカルに出演する機会には恵まれなかった。残念ながら今作においても参加楽曲はそれほど多くはないが、「All is Fair」の歌唱シーンでは、圧倒的な存在感を放っている。
何かと足かせが付けられてしまっている作品ではあるが、出演者たちの歌唱力による付加価値は、十分な作品の魅力といえるだろう。
▽ストーリー
雪のように純粋な心を持つ白雪姫の願いは、かつてのような人々が幸せに暮らす希望に満ちた王国。だが、外見の美しさと権力に執着する邪悪な女王によって、王国は闇に支配されていた。女王は、白雪姫の“本当の美しさ”に嫉妬し、彼女の命を狙うが、不思議な森で出会った7人のこびとたちや、城の外の世界へいざなってくれたジョナサンに救われる。誰もが希望を失いかけた時、仲間たちと力を合わせ、白雪姫の優しさが起こした素晴らしい奇跡とは…?
▽クレジット
公開日:2025年3月20日(木・祝)
監督:マーク・ウェブ
出演:レイチェル・ゼグラー、ガル・ガドット、アンドリュー・ブルナップ、マーティン・クレバほか
〈日本語吹替声優〉
出演:吉柳咲良、河野純喜、月城かなと、諏訪部順一、大塚明夫、津田篤宏、平川大輔、小島よしお、浪川大輔、日野聡、井上和彦、中井和哉
音楽:パセク&ポール
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