【写真】嵩(北村匠海)の苦しみが描かれた『あんぱん』第4週
第4週の週タイトル「なにをして生きるのか」は、言わずとしれた『アンパンマンのマーチ』の一節だ。ちなみに、第3週の週タイトルは「なんのために生まれて」。おそらく第3週と第4週はセットになっており、続く歌詞「こたえられないなんて そんなのはいやだ!」の流れを汲み、人生の“答え”を探す嵩の心情に寄り添ったものだろう。
子どもの嵩は、利発でどこか達観した視点を持っていたように思う。泣いたり怒ったりすることもなく、いつも冷静で、子どもらしくない子どもであった。成績優秀で首席を取ったこともあるというエピソードからも、非の打ち所がない(それゆえ御免与町では少し浮いた存在だった)少年だったといえる。
しかし、成長を重ねるうちに、嵩は徐々にナイーブになっていった。勉強はあまり好きになれず、夢中になれるのは漫画だけ。本来、好きなものがあるのは素晴らしいことのはずなのに、成績優秀な弟・千尋(中沢元紀)に引け目を感じてしまう。長く過ごした柳井家も、嵩にとって心から居心地の良い場所とは言い難かっただろう。
第4週で線路に寝転ぶシーンが二度も描かれたように、この頃の嵩は常に「死」を意識していたのかもしれない。
幸い、伯父・寛(竹野内豊)漫画好きを肯定的に受け止めていたが、それでも嵩は「漫画を描いて暮らしていきたい」とは、口が裂けても言えなかった。
嵩の描く漫画には、たびたび“おさげ姿”の女の子が登場する。それはきっと、のぶ(今田美桜)をモチーフにしたキャラクターなのだろう。第19回に登場した漫画では、複数の女の子から「キャーキャー」ともてはやされる青年が、最後はおさげの女の子のおかげで“合格”を手にする…そんなストーリーが描かれていた。
嵩の「生きるよろこび」は、実はすぐ目の前にあるのに、当の本人はまだそれに気づけていない。そんな状況の中、続く第5週のタイトルは「人生は喜ばせごっこ」。これは、やなせたかしの言葉をまとめた書籍『やなせたかし 明日をひらく言葉』(PHP文庫)に収録されているフレーズだ。書籍の中で、やなせは「人は何が一番楽しいんだろう。何が一番うれしいんだろう。その答えが『よろこばせごっこ』だった」と語っている。
第20回で、ヤムおじさん(阿部サダヲ)に「自分のために生きろ」と言われた嵩。これから何を経て「人を喜ばせること」が自分の生きる道だと気づいていくのだろうか。新たに登場する同級生・辛島健太郎(高橋文哉)が、何かきっかけとなる“スパイス”を与えてくれるのかもしれない。
第5週から、のぶは女子師範学校の寮に入寮し、嵩との接点は減ってしまう。離れている間に二人の心境に変化はあるのか?恋愛模様も含めて、嵩の進む道を見守っていきたい。
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