今月5日と6日、アイドルグループ「AKB48」は東京・有明の東京ガーデンシアターでコンサートを3公演行った。同会場のキャパシティは8000だが、3公演ともチケットは完売したという。
単純計算で2万数千人がAKB48を観るために集まったことになる。それはいったいなぜなのか? V字回復の理由を探ってみた。

【関連写真】有明の東京ガーデンシアターで開催されたAKB48コンサートの模様

今月5日と6日、AKB48のコンサートが開催された。大規模なコンサートが行われるのは、昨年3月の“春コン”以来、実に1年2か月ぶりのことだった。その間もいくつかコンサートはあったが、いずれも小規模なものだった。

会場に入って客席を見渡してみると、実によく観客が入っている。「チケットは完売した」という情報は耳にしていたが、ステージが見えにくいと思われる一部客席は初めから発券していなかったらしく、そのエリアを除けば、ほぼすべて埋まっていた。会場の東京ガーデンシアターのキャパは8000。これを2日間で3公演行い、チケットを完売させたわけだ。

たしかに、いくつかのブーストはかかっていた。まずはゴールデンウィークだったということ。もうひとつは、6日の昼・夜は村山彩希の卒業コンサートだったこと。
卒コンはかつてのファンも集まりやすい。しかし、5日は通常のコンサートだったから、チケット購入動機が減るにもかかわらず満員だった。

去年の春、AKB48はぴあアリーナMM(キャパ:1万2000人強)で2日間のコンサートを開催している。初日は柏木由紀の卒コンだった。これはさすがに満員だった。ところが、翌日のコンサートは埋まらなかった。レジェンドと呼ばれるようなメンバーが参加しないと、1万人規模の会場は大きすぎたのだ。

あれから1年。AKB48は8000人を余裕で満員にできるグループに成長した。この原因は何なのだろう。

大きいのは、若手メンバーの台頭だ。今のAKB48は2011年に加入した13期生が一番の古株で、昨年加入の20期生までが所属している。
2022年に加入した17期生以降のメンバーは若手としてくくられているのだが、この若手メンバーにファンがついているのだ。

最新シングル『まさかのConfession』には、選抜メンバー16人のうち8人が若手で構成されている。特に注目すべきは、17期生の佐藤綺星、18期生の八木愛月、秋山由奈、19期生の伊藤百花、花田藍衣の5人だ。佐藤は前作『恋 詰んじゃった』のセンターであり、八木は最新作のセンターである。選抜に入っているということは人気があるということだし、センターに抜擢されるということは、期待されるだけのポテンシャルを持っているということに他ならない。

1年前からの最大の変化といえば、この5人が台頭し、彼女たちに女性ファンがついたことだろう。東京ガーデンシアターには、1年前からは考えられないくらい、若い女性のファンが多く来場していた。

20代のある女性ファンは語る。

「きっかけは『恋 詰んじゃった』の動画をTikTokで見たことでした。佐藤綺星ちゃんがかわいいと思いました。でも、よく見たら、他にもかわいいメンバーがいっぱいいることに気づいたんです。今は佐藤綺星ちゃんと伊藤百花ちゃんを推しています」

このファンは、小学生時代にAKB48ブームの洗礼を受けている。
『恋するフォーチュンクッキー』は全校児童で踊っていたという。そんな世代が一回りして大人になって、自由にお金を使えるようになり、それぞれの推し活を楽しんでいるというわけだ。そして、その入り口はやはりTikTokなどの動画だった。

AKB48以外にも女性ファンが多く来場するグループは存在する。だが、AKB48にもその波が押し寄せているということなのだろう。AKB48は劇場公演や握手会など、とにかく“現場”が多いグループ。推し活に向いているのかもしれない。

現在のAKB48は、全国ネットのテレビでレギュラー番組を持っていない。『AKBINGO!』が終了したのは2019年の話だ。その後、テレビ東京でレギュラー番組がスタートしたが、残念ながら人気回復に大きな影響を与えることはなかった。だが、この流れが続けば、自ずとレギュラー番組も復活するはずだ。

昨年12月、AKB48は東京・秋葉原の専用劇場をリニューアルした。
そこで4代目総監督の倉野尾成美は「目指すステージは東京ドーム」と宣言した。このV字回復傾向が続けば、遠くない未来に実現するのではないか――。そう感じた2日間だった。

【あわせて読む】劇場公演1,300回超え!AKB48 村山彩希が貫いた信念と、たどり着いた前人未到の地平線
編集部おすすめ