HKT48の田島芽瑠が、Web会議アプリのZoomを使って演劇を生配信した劇団ノーミーツの演劇長編作品『門外不出モラトリアム』に出演し、その好演が話題になった。自粛期間中の新しい試みにどんな手応えを感じたのか、また厳しい状況が続く今、現役アイドルとして何を思うのか…。
リモートインタビューで「今の気持ち」をたっぷりと語ってもらった。

【写真】HKT48田島芽瑠が出演したリモート公演『劇団ノーミーツ』

自粛期間中、活動が大幅に制限されたエンターテインメント業界で、大きな話題となった存在が「劇団ノーミーツ」だ。
 
ノーミーツとは「NO密」や「濃密」といった今ならではのキーワードとかけた劇団名だが、もっとも特徴的のはまさにno meets……出演者は一度も会ったこともなければ、舞台上で顔を合わせることもない、という部分。
 
実はこの劇団、Web会議アプリのZoomを使っての演劇を配信しているのだ。

演者たちは自宅から「出演」。共演はしているけれど、実際に顔を合わせることはないし、観客もまたZoomの画面越しに観劇をする。すべての面において「3密」を完璧に避けたシステムは閉塞状態にあった演劇業界から「その手があったか!」と注目されまくり、5月23日と24日に配信された初の長編作品『門外不出モラトリアム』は好評につき、5月31日に追加公演まで行なわれた。劇場がなくても、興行的に成功を収めるという革命が起きたのだ。
 
その『門外不出モラトリアム』に出演したのがHKT48の田島芽瑠だ。

「TikTokのおすすめでノーミーツさんの『Zoom飲み会してたら怪奇現象起きた…』という短編作品を知ったのがきっかけです。最初はお芝居だと思わなくて、本当に起きたことを投稿したものだと思っていたんですよ。それが調べていったら、Zoomを使ったリモートでのお芝居をやっている劇団だと分かって、しかも長編の舞台を予定していてオーディションを開催する……どうしても受けたい!と思って、書類選考からオーディションを受けさせていただきました」(田島)

なんとキャスティングされたのではなく、みずからオーディションを受けていたとは! 昨年は映画『泣くな赤鬼』にも出演するなど女優経験もある彼女は、リモート演劇という、2020年春だからこそ成立する新ジャンルに激しく興味を抱き、みずからオーディションにトライする道を選んだ。
もちろんオーディションもZoomで行なわれ、田島芽瑠は主要キャストの「マイ」役に選ばれた。

「マイという役柄に縁があったんだと思います。もし、あの役がなかったら私は選ばれてなかったんじゃないかなって。そういう意味では運がよかったですね」(田島)

ざっくりと概要を説明すると「2020年4月に入学した大学生が、卒業式までの4年間、ずーっとリモートのままキャンパスライフを送ったら」というのが基本的な設定。セリフの中にコロナというワードは出てこないが、この春の外出自粛がベースになっていることは間違いない。荒唐無稽に見えて、すべての人がものすごくリアルに感じることができる世界。13歳でHKT48 のセンターに抜擢された田島芽瑠も、早いものでもう20歳。女子大生役がぴったりハマる年齢になったこともまたリアルさにつながってくるのだ。
 
主要キャストの5人は大学の同じクラスの仲間。最初は脇役のように見えたマイだが、主人公のメグルが何度もタイムリープを繰り返すことで、彼女たちを取り巻く状況や彼女たち自身の運命までコロコロと変わり、マイがメインとなる時間軸も存在する。

「そういう部分では大変でした。演じ分けなくてはいけないので。
それに自分の出番がないときには、すぐに次の場面の衣装に着替えて、マイはおしゃれな女の子だろうなと思ったので髪型も変えたし、気づかないかもしれないですけど、シーンごとにイヤリングも変えていたんですよ。もうね、自分が出演していないときのドタバタぶりをSHOWROOMで裏配信したかったぐらいですよ、アハハハ!」(田島)

「いちばん大変だったのは夜公演ですね。(授業おわりのシーンなどが多いので)実際は夜なのに、部屋を昼間っぽく見せるのは苦労しました。自分で照明を工夫したりして、いろいろと学べたな。ある意味、みんなキャスト兼スタッフなんですよね。自分の部屋から出演しているから、すべて自分でやらなくちゃいけない。ふと部屋を眺めて、我に返ると『あぁ、ひとりぼっちだ……』って感じちゃうんですけど、けっして、ひとりぼっちじゃないんです。みんなで協力しあって、ひとつの作品を作っている。そういう演者やスタッフの熱を感じながら、さらに厚くなって作っていく「演劇らしさ」というのは実際の舞台でも、リモート演劇でもまったく変わらないと思います!」(田島)

タイムリープを何回も繰り返す、というストーリーを考えたら、本当は映像作品のほうがマッチする題材だ。ただ、今のリアルな世の中の状況とリンクしている、ということを考えた場合、たしかに生で演じることに意味がある。ただ、一部の視聴者が「これ、編集したものを流しているんだよね?」と勘違いしてしまうほど、完成度は高かった。

「何度か見ていただいた方ならわかると思うんですけど、すべての回がちょっとだけ違うんですよ。
一度、演技をしているのか、リアルに会話しているのか、みんなでわからなくなっちゃったときがあって、そのときは上演時間がちょうど1時間ぐらい長くなっちゃいました(苦笑)」(田島)
 
ただ、その仕組みを知れば知るほど、心配になってくることがある。
 
万が一、回線トラブルなどがあり、演者が画面から消えてしまったら、どうなってしまうのだろうか? 

「実はあったんですよ。ゲネプロのとき、私のPCの回線が何度も落ちてしまって、本当はいなくちゃいけないシーンに私がいない、という状況に繰り返しなっちゃったんです。そのときは共演者の方がうまくつないでくれて『あっ、マイから電話だ』とか言って、私のセリフがなくてもストーリーが進むようにしてくれたんです。本番でそんなことになったら大変だったと思うんですけど、ゲネプロでトラブルがあった直後からスタッフさんが動いてくださって、公演中にはそういうトラブルはまったく起こりませんでした。そういったテクニカル面もすごかったです」(田島)

後編へ続く
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