【写真】時に真剣に、時に笑顔で下ネタについて語る紺野ぶるま
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――紺野さんは21歳で松竹芸能の東京養成所に入り、芸人の道に進んだそうですが、当初は芸名通りブルマ姿でネタを披露していたそうですね。
紺野 くまだまさしさんに憧れてお笑いの道に入ったんですけど、お尻でクラッカーを鳴らしちゃうような手放しで笑えるアメリカ的なお笑いをやりたかったんです。
――くまださんもブルマを穿いていますもんね。
紺野 自分ではブルマを穿くことで“愚の骨頂”を表現したつもりなんですけど、周りからは女を武器にしているんじゃないかと言われて。でも、そんな意図は全くなかったんです。ネタの内容は全くエロくなかったですし、女を捨てて、ここまでやっていることを笑ってくださいという女子高のノリでした。当時は今よりも10キロぐらい細かったんですけど、そういう体型の若い女がブルマを穿いたら人にどう見られるのか分かっていなかったんです。 私は女子高出身なんですけど、周りに異性がないから、ブルマ姿でいると面白いみたいな空気になるんです。要は世間知らずだったんですよね。
――確かにブルマ姿は女性を売りにしていると思われかねないですね。
紺野 むしろ私は女を武器にした女性芸人が苦手だったんですよ。ただ下品な用語を言うだけだったり、水着を着てネタをやったりするのが逃げだと思ってたんです。飲み会などで体を露出したりして、異様でした。本人からしたら、男性芸人と同じように脱いでいるつもりだったと思うんですけど、周りはそう見ないじゃないですか。それを見た男性は、「ラッキー!」って反応か、汚いものを見るような反応の両極端で、それも嫌でした。でもなにもわからずブルマ姿でネタをする私もそう見られてたと思います。
――お笑いライブでの反応はいかがだったんですか?
紺野 全然よくなかったです。賞レースも受からないので、世間とズレがあるのかなと思ってブルマのネタは一旦断念しました。養成所の先生からも「見てられない」と言われていました。すごく出たかった地上波の番組のオーディションに行ったときも、ネタが終わってディレクターさんから言われたのは「エッチしたい」というストレートな口説きでした。ブルマ姿でネタをやっていたので、「こいつイケる」と思われたのか......。そんなこともあって自分のやりたいことと、世間の捉え方のズレに気付きました。
――評価してくれる人もいたんですか?
紺野 「ぶるまがブルマを穿いてもエロくないのがすごい」と評価してくれる人もいましたし、「ギャップがあって面白いね」と私の意図を理解して褒めてくれる女性芸人の先輩もいました。だから「エロい」と言う人に対しては、「何にも分かってないな。全身ちんこかよ」って怒りすら感じていました。私はお笑いとしてやっているのに、もっと性別に関係なく割り切って見てくれよって思いだったんです。
――そんな下ネタに嫌悪感を抱いていた紺野さんが、どうして「ちんこ謎かけ」をやろうと思ったんですか?
紺野 本当に偶然なんですよ。女性芸人だけのお笑いライブに、ゲストでねづっちさんがいらっしゃって、エンディングで謎かけコーナーをやったら、私だけ次々と答えを出して褒められたんです。それがきっかけでコージー冨田さんの謎かけライブに誘っていただいて、そこで出された「ハンガー」というお題に、「ちんこと解きます。その心は、どちらも、かけます」と答えたら、ものすごくウケたんです。その後も、すべてのお題をちんこで解いたら、 周りの芸人さんの援護射撃もあって大爆笑で。ねづっちさんには「下ネタ云々の前に、ちゃんと(言葉が)かかっているのがすごい」と褒めていただいたり、自分でも手ごたえを感じました。
――下ネタを封印していたのに、どうして、ちんこ謎かけはスラスラと解けたんでしょう か?
紺野 私には4歳離れた兄がいて、お笑いが大好きだったんですけど、その兄が友達同士で話すくだらない下ネタが、少年ならではのユーモアとオチがあって面白かったんです。それに自然と影響を受けていたと思いますし、私がお笑いに目覚めたのも兄の影響が大きいです。
――ちんこ謎かけという思わぬ才能が開花して、すぐにテレビにも呼ばれたんですか?
紺野 それが私の所属する松竹芸能は、あんまり下ネタを良しとしない空気だったんです。 ハッキリ言われた訳じゃないんですけど。なので2年ぐらい、ちんこ謎かけはコージー冨田さん主催のライブだけでやるものって決めていました。
――転機になったのは?
紺野 ねづっちさんが、謎かけの上手いおススメ芸人として『お願い!ランキング』(テレ ビ朝日)に呼んでくださったんです。そこで、ちんこ謎かけを披露して、収録中も手ごたえを感じましたが、放送を見ても結果を残せた実感がありました。すると放送翌日に、吉田照美さんがラジオで褒めてくださって、番組にも呼んでくれたんです。それをきっかけに仕事も増えて。さらに、ある番組のオーディションでお会いした伊集院光さんがラジオで「難しい芸事をやっている」と評価してくださったのもあって、たくさんのバラエティに呼んでいただけるようになりました。
※後編「ブルマ姿で一発ギャグをしていた頃は痛々しくて浮いていた」はこちらから
※後編は21日(金)午前11時30分公開予定です。

紺野ぶるま『下ネタ論』
発行元:竹書房
発売日:2020年7月30日
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