【写真】俳優の時とはまた違った顔を見せる、Mリーグ ユニフォーム姿の萩原聖人
――Mリーグ開始時、萩原さんはすでに評価も知名度も確立した俳優でした。それが、麻雀プロという第2の道を自ら選ばれた。両方をやることで批判や軋轢があることも想像されたと思います。なぜMリーガーになったんでしょうか。
萩原 僕は麻雀が好きで、これより面白いゲームはないと思っています。今年50歳になるんですが、そんなタイミングでこういうものが始まる、となったとき、それって僕が50前にして憧れていた場所だという事に気付いたんです。いままでテレビで芸能人同士で対局したり、各団体のプロの方と闘ったこともありますが、いわゆるお給料、年俸をもらって闘う本当の意味でのプロの戦場というのは初めてでしたから。大げさかもしれないけど、僕にとっての「夢」だったかもしれない。
――麻雀愛ゆえに、ということですね。
萩原 あとは自分が若いころから応援してくれていたファンの人たちが、僕と同じように年齢を重ねて30代後半から50代くらい、お父さん、お母さんになってる人も多い。その人たちに「俺は新しい扉を開いて頑張るから、みんなももう一回頑張ってみない?」みたいな、そういうちょっとしたエール交換の思いもありましたね。
――ただ、出たいから、だけで出られる舞台ではありません。まず出場資格が特定の団体に所属するプロ選手であることでした。
萩原 自分はアンチプロというわけじゃないけど、プロに負けたくない、プロより面白い麻雀を打つんだ、って気概でやってたところはあるんですよ。当然、他のプロと麻雀観が違ったりもする。誰が正しくて誰が間違ってる、なんてことはないですが、自分の中で大きな決断として、日本プロ麻雀連盟さんにお世話になって、Mリーグを目指すことを決めた。そんな感じですね。
――萩原さんの参加で、麻雀を知らない人にとっても一気に注目度が高まったのは事実だと思います。
萩原 最初のうちは僕がいることで話題になることもあったと思います。であれば、言い方はよくないかもしれないけど広告塔として、それは大いに利用してくださいと。それも込みで一番最初から関わりたかったですね。ただ、芝居のパフォーマンスがMリーグをやることで下がるのは、絶対に避けなくてはいけない。そこは僕自身が責任をもって立ち回らなければいけないと思いますね。
――萩原さんは麻雀のどこにそこまで惹かれるのでしょうか。
萩原 これは僕個人の意見として聞いてほしいんですが、麻雀の本質はエンターテイメントで、競技にはなり得ないと思ってる部分があって。公平性がないゲームなんです。単純に個人の力量を比べるなら、ボクシングで選手の体重をそろえるようにスタート位置が同じじゃなきゃいけない。それに当たり牌が1枚しかないような手が、5枚も6枚もあるような手に勝つこともあって、確率のようで確率でもない。160cmの小さな選手が2m200kgの選手に勝つこともあるというか。「それって競技じゃなくてエンタメでしょ?そのほうが絶対面白いでしょ?」って思うんです。
――なるほど。Mリーグは初年度からの盛り上がりを受けて「この熱狂を外へ」、つまりまだ麻雀の面白さを知らない人への波及をスローガンに掲げていますが、萩原さんの思う麻雀のエンタメ性は「外」に届き得るものなのでしょうか。
萩原 そうですね……誤解を恐れずに言えば、まだ時間がかかるものだと思います。3年くらいで、そんなに簡単に麻雀が持っていたマイナスイメージが変わるかというと、やっぱり難しい。今も選手個人が考えてやってることはいろいろありますけど、果たしてそれは「外」に届いているのか。
――一過性の盛り上がりで終わらせないために、それぞれが模索する必要がある。
萩原 選手のことだけじゃなく試合のルールに関して、例えば長考(どの牌を切るか長い時間考えること)にしても、現行で抑止力になるルールはありますがその罰則が出たことが無くて、実際に試合終了が23時をまわったりもする。また、新しいレギュレーションで、2年連続でセミファイナル進出できなければそのチームは選手をひとり変えるルールもできましたけど、これは劇薬過ぎるんじゃないか、とか。
もっとブラッシュアップして、健全に盛り上がるやり方をみんなで考えていかなきゃいけないでしょうね。「Mリーグ」批判と取られると困るし、今の盛り上がりに水を差すつもりも全然ありません。けど3年間選手としてやって来て、出しゃばらない程度にですけど、そろそろリーグ全体のためにやれることを自ら発信してもいいのかもしれない。そのうえで、僕としては必至に、麻雀のゲームとしてのエンタメ性と、勝ち負け以上の面白さを伝えるために試合に臨んでいきたいと思います。
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