●やることは変わらないが「話しかけやすさ」が進化
最初に結論:スマートスピーカーの用途そのものは大きく変わらないものの、Geminiの搭載によって自然な会話が成立しやすくなり、日常的な使い心地が向上した。

記事の重要ポイント:

約6年ぶりに登場したGoogleの新型スマートスピーカーは、Gemini搭載によって自然な音声対話を実現。

セットアップはやや煩雑だが、音質や基本的なスピーカー性能はHomePod miniに匹敵する満足度。
Geminiの最大のメリットは聞き返しや認識ミスが減り、ストレスなく話しかけられる操作体験にあった。

Googleが、約6年ぶりに新型スマートスピーカーを発売した。新しいのは、「Gemini(ジェミニ)」が使えること。これを購入して家に置くと、どういった体験が期待できるのか。本稿では、同機の概要を振り返りつつ、実際に使ってみた印象をお伝えしたい。

なお、筆者宅では現在、対応のドアホンやネットワークカメラのようなスマートホームデバイスを導入しておらず、今回のGoogle Home スピーカーのポテンシャルを100%活かせる状況ではない。

しかし、スマートスピーカー単体での導入を検討する人の方も、おそらくは多数いるだろうと思うので、今回はそのまま単体での使用感について言及してみようと思う。
○約6年ぶりのGoogle新スマートスピーカー

そもそも、Googleはこれまでにどんなスマートスピーカー(とそれに近い製品)を発売してきたのだろうか。

日本国内で展開された歴代の主な製品を列挙してみると、以下のような製品が確認できた。なお、末尾に「*」が付いている製品は、画面を備えたスマートディスプレイだ。

2017年10月:Google Home
2017年10月:Google Home Mini
2019年6月:Google Nest Hub(第1世代)(*)
2019年11月:Google Nest mini
2019年11月:Google Nest Hub Max(*)
2019年11月:Google Nest Wifi 拡張ポイント(※スピーカー等としても機能する)
2020年10月:Google Nest Audio
2021年5月:Google Nest Hub(第2世代)(*)
2023年6月:Google Pixel Tablet(※同梱の充電スピーカーホルダーを活用してスマートディスプレイ風に使える)
2026年6月:Google Home スピーカー

こうして振り返ってみると、純粋なスピーカー製品としては、2020年に発売された「Google Nest Audio」から6年弱が経っている。


一方で、ディスプレイを備えた製品群を考慮に入れると、2021年にNest Hubの第2世代モデルが出ているし、2023年にPixel Tabletが展開されていたわけで、スマートホーム系の製品としては、2~3年ぶりに出た順当な新作といった言い方もできそうだ。

ただ、このタイミングで“純粋なスピーカー型”の製品が復活したのは、やはり「Gemini」のインパクトを最大限発揮するためであろう。

●デザインがミニマルで気に入る人は多いと思う
ではまず、歴代モデルと照らし合わせつつ、新モデルの「Google Home スピーカー」のデザインを確認してみよう。

同機は、球状に近い形状で、底面を除く表面はファブリック素材で覆われている。底面付近には操作時等に連動して光るライティングが備わっている。

名称の近い2017年版の「Google Home」シリーズ(※当時は「スピーカー」が付いていなかった)について思い返してみると、「Google Home」が背が高いホームルーターのような雰囲気で、小型の「Google Home mini」が、例えるなら”あんパン”のような平べったい形状だった。

そして、2019年の「Google Nest mini」も、「Google Home mini」の系譜を継ぐ平べったい形状だった。一方、2020年の「Google Nest Audio」はホームルーター系の縦長直方体な形状ではありつつも、全体的にファブリックな意匠で独自性があった。

こうした流れを俯瞰しつつ、今回の「Google Home スピーカー」を眺めてみると、どの製品とも異なるデザインが採用されている。

Nest miniやNest Audioに近いファブリックな外観ではありつつも、形状は球体に近い。Nest miniを「小」、Nest Audioを「大」とするならば、「Google Home スピーカー」が「中」といったところだ。

なお、Googleが最先端のデザインを探っているというわけではない。
競合他社が採用するデザインのトレンドを踏まえてみても、Appleの「HomePod mini」やAmazonの「Echo Dot」などが、こうした球体形状を先行して取り入れている。

インテリアにも馴染ませやすい、スマートスピーカーとしてのスタンダードなデザインが市場で固まってきていて、Googleもそこに落ち着いた――というのが実像だろう。

○ミニマルなスタンダードデザインで好印象

新型「Google Home スピーカー」のデザインは、ミニマルで筆者としても好印象だ。カラーはHazel(黒系)とPorcelain(白系)の2色展開で、今回は前者を試用した。

ちなみに、Hazelの「黒」は、やや淡めだ。筆者の書斎はダークブラウンと黒でまとめているのだが、そのなかで淡い黒は少し浮いた印象だった。また、細かいところだが、スピーカー本体は黒系でも電源ケーブルは白色なので、配線を目立たないように隠したくなった。

おそらく、配線や機器が目立たないリビングのような生活感のある空間の方が、同機は馴染みやすいかもしれない。

●初期設定はちょっと面倒、音質は悪くない
続いて、使用感について確認した。筆者はメインのスマートフォンiPhoneを使っているので、今回はiOS版の「Google Home」アプリを使用。アカウントはビジネス用のGoogle Workspaceと、個人向けの無料版Googleアカウントの両方を使い分けているが、今回は後者を用いた。

初期設定は、基本的に画面指示に従って進めれば良いだけなので詳細は割愛する。
ただし、気になった点が2つあったことには一応触れておきたい。ひとつは、製品底面にあるセットアップ用のQRコードが小さくてなかなか認識してくれなかったこと。もうひとつは、とにかく設定操作が長かったことだ。

この手のセットアップで稀に遭遇する現象だが、公式アプリ内で起動するカメラが、なかなかピントを合わせられず、小さいQRコードを認識してくれなかった。うまく認識してくれる距離、角度を探して、数分間ではあるが苦戦を強いられた。

最初のセットアップのときだけ苦労すれば良いことではあるが、この辺りの体験について、iPhoneとHomePodで連携する際のようなスマートさと比べると、少々見劣りするものはあると思う。

○Gemini関連の設定パートは丁寧ながらやや手間

また、Gemini関連の設定が含まれることで、セットアップの画面手順が異様に長かったこともデメリットだと思う。筆者は原稿執筆用に全ての手順のスクリーンショットを記録していたのだが、その枚数を数えてみたら50枚弱あった。

もちろん、Gemini関連の利用規約の確認や、各種機能のオン・オフなどを選択するうえで、必要な流れではある。しかし、やはり確認に時間がかかり、セットアップが終わった際の疲労感もあった。

こうした機器類に不慣れな人ではうんざりしてしまうかもしれない。ガジェット類に忌避感のない人でも、ある程度時間に余裕を持って、別のデバイスで不明な機能についてリサーチできる体制を整えてからセットアップに取り掛かるのがベターだろう。


○音質は十分良好、操作はアプリやデバイスの天面で行う

セットアップが完了したあとは、まずYouTube Musicで楽曲を再生してみた(※セットアップ時にほかのストリーミング系サービスも選択できる)。

音量は十分に大きく、音質も良好。当然音源による部分もあるが、スピーカーとしては低音域から高音域まで、比較的フラットに調整されていて、不快に感じるポイントは特になかった。

普段からサブスクの音楽配信サービスで楽曲を楽しんでいる方であれば、おそらく不満なく使えるはずだ。音量に関しても、例えば30%も出せば、日本の賃貸だと音が大きすぎると感じるレベルだろう。

筆者の書斎のデスクで再生するならば、20~25%くらいで十分。筆者の体感としては、音質・音量ともに普段使いしているAppleの「HomePod mini」にかなり近い。

なお、楽曲再生等のコントロールは、音声コマンドでおこなうか、アプリからの操作、あるいはデバイスの天面をタップする操作などで行える。なお、天面をタップすると左右にLEDの点が光り、そこをタップすると音量のアップ・ダウン操作が行える。

ちなみに、この操作に関しては、セットアップのなかでまともなチュートリアルが用意されていなかったので、同社の過去のデバイスを扱ったことがない人は、気づかずにスルーしてしまうかもしれないと思った。

●Geminiが使えるメリット・デメリットは?
さて、Google Home スピーカーのウリである「Gemini」が使えるメリットを考えていきたい。

正直、今回試用した1週間ほどの期間で、思いついた活用方法をいろいろと試したのだが、出力結果自体はパッとしなかった。
生成AIに対する期待値が高すぎたのかもしれない。

例えば、「ねぇ、Google。ナスを使ったおかずのレシピ考えて?」と聞けば、2~3種類のレシピを提案くれるが、これが長い。生成AIツールを使い慣れた方ならお馴染みの経験だと思うが、こちらの尋ね方が大雑把だと、回答が冗長になりがちだ。

それも機械音声独特のリズムで、長尺で話されると、内容が頭に全く入ってこない。Geminiが“2つ目のレシピ”の具体的な作り方を話している段階で、「もう聞くの疲れた……(うんざり)」と脳が停止してしまう。快適に使うには、この辺りの“こなれ感”の進化を待つか、聞き方を工夫したほうがよいだろう。

また、よくある使い方として、Gemini相手に壁打ち的な議論を深めようとした場合には、スマホやPCからアクセスするアプリ自身が競合となってしまうことに気づいた。これは、Google Homeスピーカーとの会話の内容を、テキストで確認・出力する術が今のところなさそうだからだ(アクティビティの記録は残せるので、対応策は探せばあるかもしれないが……)。

要するにスマホやPCで生成AIを使った方が手っ取り早い。ただ、一応「ねぇ、Google。さっきどんな会話したっけ?」のように聞くと、直前の会話内容について教えてくれはする。
Google Home スピーカーに音声でメモしておいた内容を、音声で確認するという使い方については、創意工夫次第で実用性を見出せるかもしれない。

そのほか、語学学習に使うのはどうだろう――と「ねぇ、Google。TOEIC用に英単語の問題を出して」のような使い方も試してみた。ただし、日本語の読み上げ音声では、英単語や文章の発音が不自然な日本語発音になり、現時点ではうまくいかなかった。
○Geminiは人の話をきちんと聞いてくれる

こうした検証を重ねたうえで、なんとなく筆者なりの結論が出た。Gemini搭載のメリットは「『すみません、よくわかりません』という返答がなかったこと」だと。

実は、今回の検証期間中、指示が伝わらなかったことは、一度もなかったのだ。こちらの思考がまとまっていなくて、指示が途中でどもったり、噛んでしまっても、ちゃんと反応してくれた。

きっちり伝えないと何度も言い直させられる――という事態にならないので、ストレスがあまり無い。これは意外に大きなメリットだと思う。

○Geminiの搭載で「話しかけやすさ」は圧倒的に広がった

もちろん、こちらの意図通りの出力が返ってくるとは限らない。例えば、「ピアノアレンジの曲を再生して」と言って、Geminiが「ピアノアレンジの曲を再生します」と返答したとしても、オーケストラの楽曲が再生されるようなことは多々あった。

とはいえ、普段他社の音声アシスタントを使っていて「わかりませんでした」や、聞き間違いによる的外れな回答をされる頻度とストレスを思えば、こちらの忌避感も下がるというものだ。

要するに「スマートスピーカーでやると便利なこと」の幅はGeminiの有無でさほど変わらない印象だったが、「スマートスピーカーが受け入れてくれる話し方」の幅はGeminiによってかなり広がった気がする――というのが今回の試用のまとめだ。

Geminiを搭載したという看板は非常にキャッチーだが、ユーザー視点では劇的な体験の変化を期待するのではなく、「マウスのクリック感が良くなった」や「キーボードの打鍵感が良くなった」のように、「スマートスピーカーの操作感が良くなった」という正当進化をイメージしておくと、購入後のメリットを具体的に描きやすいのではないかと思う。
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