日本における天ぷらの起源は安土桃山時代にポルトガル人が長崎に伝えたフリッターのようなもので、油が高価であったため、限られた人間しか味わえない、超がつくほどの高級料理であったとのこと。
時代が進み江戸時代になり、天ぷらは屋台で提供され庶民のファストフードとなり、急速に広まった。江戸時代から明治時代になると、お客の目の前で趣向を凝らした天ぷらを味わうことができる高級料亭のようなスタイルが確立し、さらに関東大震災によって多くの天ぷら職人が日本各地に移り住んだことから、日本全国に今の天ぷらの形が広まっていったのだそうだ。
海外からもたらされた料理が長い時間をかけ、日本独自の素晴らしい料理として世界に誇れるようになった天ぷらには、日本各地に名店と呼ばれているお店が存在する。
今回はそんな全国にある天ぷらの名店の中から、愛知県豊橋市にある素晴らしいお店をご紹介したい。
お店の名前は「天源」。
・1962年(昭和37年)創業の凛とした老舗天ぷら店、それが「天源」
こちらのお店、1962年(昭和37年)創業の老舗天ぷら店。
1962年(昭和37年)と言えば、東京の人口が1000万人突破し、世界初の1000万都市になり、日本のテレビ受信契約者が1000万人を突破した年。
また、世界では「キューバにソ連のミサイルが持ち込まれている」という情報から、アメリカのケネディ大統領が「海上封鎖」を表明し、核戦争の危機なるという、いわゆる「キューバ危機」が起きた年なのだ。
そんな世界は冷戦時代のど真ん中、日本が高度経済成長のまっただ中、そんな時代にこちらのお店は誕生したのだ。
・最高の素材を最高の技術で提供してくれる、本物の天ぷらが味わえるお店、それが天源
こちらのお店、最高の素材を最高の技術で提供してくれる、本物の天ぷらが味わえるお店として地元の方だけでなく、地元以外の方からも愛されている。
その理由は天ぷらコースをオーダーすればわかる。
天ぷらが提供される前に、
サラダ、
茶碗蒸し、
そして季節のお造りが提供されるのだが、そのどれもが素晴らしい。
サラダはきゅうりと大根がしっかりと水抜きされた上でキリリと冷やされており、シャキシャキとした歯応えとみずみずしい味わいを楽しませてくれる。そこにはきゅうりの青臭さや大根の水っぽさなど微塵もなく、さっぱりとしたポン酢のような味わいで楽しめるのだ。
もちろん茶碗蒸しの素晴らしさは言うまでもない。
そして特筆したいのがお造りだ。この日はイカだったのだが、その味わいは超一流の寿司屋で提供されるような最高の逸品であった。
そんな次々と提供される天ぷら以外の食事に一つ一つの感動を受けた後に、いよいよ最高の天ぷらの時間がスタートする。
もしもカウンターに座ることができたなら、ピカピカに磨き上げられた銅の揚げ鍋とその素晴らしい所作を目の前で体験できる。もちろん揚げ鍋だけではなく、目に見えるその全てが清潔に保たれており、凛とした雰囲気すら感じてしまうだろう。
まずは海老が3本ほど提供されるため、塩でも天つゆでも、思う存分、海老の美味しさを堪能できる。天ぷらの中心が少しレアな状態で提供されているため、甘みがありながらもっちりとしており、そして海老のぷりっとした感触も感じられる、最高の蒸し料理のような、素晴らしい味わいがそこにはある。
他にもヤングコーンやさつまいも、かき揚げなど、そのどれもが最高の味わいとなっているのだが、その理由は言うまでもない。全ての素材が最高のものであり、最高の技術で揚げられているためである。
もちろん、かき揚げは天つゆにつけて天丼のような形で味わっても、最高の味わいを楽しめる。
その土地にしかない味わいを楽しめる、旅人にとってそれは旅先で感じる幸せな時間の1つ。
その幸せとは、言葉にするのであれば、そんな場所に旅することができることの幸せ、そんな場所がこれまで失われずに継続してきたことへの幸せ、そしてそれらに出会えた幸せ、など、それぞれの旅人がそれぞれ感じる幸せに違いない。
もしそんな幸せを味わいたいのなら、豊橋を訪れてみてはいかがだろうか?きっとこの街のゆったりとした時間は、日々の生活に磨耗した心を、少しゆったりとさせてくれるに違いないのだ。
お店 天源
住所 愛知県豊橋市広小路1-42
営業時間 11:30 ~ 14:00 / 17:30 ~ 22:00
定休日 第2・4月曜日、日曜日
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