新型コロナウイルス感染症の影響に伴うレギュレーションの変更により、史上初、20チーム(通常18チーム)で争われた明治安田生命J1リーグも残すは3戦。4チームが自動降格する極めて厳しい2021シーズンだが、第35節終了時点いまだに降格枠は1つも埋まっていない。
現在降格圏にいる4チームは、17位徳島ヴォルティス、18位大分トリニータ、19位ベガルタ仙台、20位横浜FC。これらのチームが残留を果たすための、シナリオを考えた。

17位・徳島ヴォルティスが残留するためには
勝ち点30。16位の清水エスパルスと勝ち点差3の17位につける徳島ヴォルティス。現在4戦勝ちなし。残り試合の対戦相手は9位のFC東京、15位の湘南ベルマーレ、10位のサンフレッチェ広島だ。ここ3試合で1得点のみと流れは決して良くないが、望みはまだまだある。対戦相手も調子が良くないからだ。
第36節の相手、FC東京は前節の横浜FM戦で0-8の大敗。試合後に長谷川健太監督が辞任し、GKコーチの森下申一氏が監督に昇格した。また、その横浜FM戦で退場処分を受けた森重真人は徳島戦で出場停止。付け入る隙はある。
第37節、湘南ベルマーレとの一戦は残留を争う直接対決となる。
最終節の相手、サンフレッチェ広島も10月25日に監督交代。城福浩監督が退任し、ヘッドコーチを務めていた沢田謙太郎氏が指揮を執っている。ただそれ以降も2試合勝利なしと、復調の兆しは見えていない。徳島はサッカーの完成度は劣らないはずで、こういう時こそ岩尾憲の経験値、宮代大聖や垣田裕暉の得点力が必要不可欠。不用意なミスを減らし、着実に勝ち点を積むことが求められている。

18位・大分トリニータが残留するためには
勝ち点28。16位の清水エスパルスとは勝ち点差5の18位の大分トリニータ。現在2連敗中で、3戦勝ちなし。残り試合の対戦相手は4位の鹿島アントラーズ、20位の横浜FC、12位の北海道コンサドーレ札幌だ。
連敗中ではあるが、ここ5試合で6得点と得点を奪えていることはポジティブに捉えられる。片野坂知宏監督が作り上げた、自分たちのサッカーを見失っていないことも大きい。
第36節の相手、鹿島アントラーズは3連勝中と好調だが、それでも残留のためには勝ち点を積まねばならない。鹿島は後半になると失点が増える(得点も増えるのだが…)ため、エンリケ・トレヴィザンを中心とした守備陣が踏ん張り、無失点で終盤を迎えたい。
第37節は横浜FCとの直接対決。ここは是が非でも勝ち点3を取らねばならない。ボールを繋ぐ力は大分のほうが上であるため、システム上のミスマッチを的確に突いて優勢に進めることが求められる。
最終節の相手は柏レイソル。今季決して調子の良くなかったチームだが、前節の勝利で残留を決めた。ということはモチベーションでは確実に大分が上回る。この試合まで残留の可能性を残し、大逆転での残留を達成したい。その勢いがあれば、準決勝まで進出している天皇杯で、クラブにとって2つ目のタイトルまでも見えてくる。

19位・ベガルタ仙台が残留するためには
勝ち点27。16位の清水エスパルスとは勝ち点差6の19位のベガルタ仙台。現在2試合勝ちなしで、ここ10試合でみても2勝2分6敗と調子の上がらない時期が続いている。主力のMF松下佳貴を負傷で欠くチームの状況と照らし合わせても、かなり難しい状況にある。残り試合の対戦相手は15位の湘南ベルマーレ、8位のアビスパ福岡、4位の鹿島アントラーズだ。
第36節で対戦する、湘南ベルマーレとの勝ち点差は6。仙台のヤクブ・スウォビク、湘南の谷晃生。Jリーグを代表するGK対決に勝利し、勝ち点差を3に詰めることができれば望みは見えてくる。
第37節の相手はアビスパ福岡。堅守が持ち味のチームで、90分間落ちない走力が強み。ただ前半は得点力に乏しく、サイドを攻略して前半のうちに先制することで試合を優位に進められるはずだ。
最終節の相手は鹿島アントラーズ。現在3連勝中と非常に好調なだけに、第36節、第37節に勝利し引き分けでも残留の可能性がある状況にしておきたい。

20位・横浜FCが残留するためには
勝ち点27。16位の清水エスパルスとは勝ち点6差の20位の横浜FC。現在3試合勝ちなしだが、2試合連続ドローと拮抗した試合はできている。残り試合の対戦相手は3位のヴィッセル神戸、18位の大分トリニータ、12位の北海道コンサドーレ札幌。最下位ということはもちろん最も厳しい状況にあることは間違いない。
19位のベガルタ仙台と同勝ち点ではあるものの、横浜FCの場合は残留圏のチームと得失点の差が非常に大きく、勝ち点で上回らねばならない。つまり、清水エスパルスとは事実上勝ち点7差と考えるべきだ。そうなると最低でも勝ち点7が必要で、出来る限り3連勝したいところ。
ここ5試合で2勝2分1敗と決して調子は悪くないだけに、第36節のヴィッセル神戸戦に勝利することができれば同じく残留を争う大分トリニータ、4試合勝ちなしの北海道コンサドーレ札幌との試合に向けて十分に希望を持つことができる。
ヴィッセル神戸は夏の移籍市場での積極補強がハマり、ACL出場圏内につけている。難しい試合になるのは間違いないが、攻撃陣の好調さならば横浜FCも劣っていない。
その後も1試合1試合トーナメントのつもりで、準決勝の大分トリニータ戦、決勝戦の北海道コンサドーレ札幌戦という覚悟で戦うことが求められる。神戸戦、大分戦と2連勝できると、勢いはさらに増すに違いない。
まだまだ十分に残留の可能性があるクラブも、数字上はかなり可能性が低いクラブもある。とはいえ2012シーズンに残り2試合で勝ち点5差を跳ね除けたアルビレックス新潟。降格圏で迎えた最終節に0-2となったが、74分から試合をひっくり返し残留した2008年のジェフユナイテッド千葉の例があり、諦めるにはあまりにも早すぎる。
J1の残留争いは毎シーズンのように大混戦になっており、2021シーズンもまた、最後の一瞬まで目が離せない。