2021シーズンの明治安田生命Jリーグでは、最終節までもつれ込んだイレギュラーな残留争いや得点王争いなど、多くの話題が上がった。そんな話題に事欠かなかったシーズンの中でも、海外で活躍を続けていた代表クラスの日本人選手が夏の移籍で一斉に帰還したことには大いに盛り上がったのではないだろうか。
大迫勇也、武藤嘉紀がヴィッセル神戸へ、長友佑都がFC東京へ、乾貴士がセレッソ大阪へ、酒井宏樹が浦和レッズへと海外から帰還。必ずしも海外挑戦前のクラブへ戻ったわけではないが、長くJリーグを離れていた選手たちの帰還は、Jリーグファンにとっても嬉しいニュースであった。
そんな中、彼らと同世代もしくは上の世代の選手には、まだまだ海外での挑戦を続ける者たちもいる。ここではそんな選手たちの中から、香川真司、岡崎慎司、柴崎岳、長谷部誠、吉田麻也の5選手について、Jリーグの「古巣」に戻る可能性にも触れながら紹介していく。

香川真司(シント=トロイデン/ベルギー)
セレッソ大阪でプロキャリアをスタートし、近年日本人選手の大量獲得で一気に日本ではメジャーなクラブになったシント=トロイデンへ今冬移籍した香川真司。2010年ドイツ、ブンデスリーガのボルシア・ドルトムントで海外挑戦をスタートさせ、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)やベシクタシュ(トルコ)など、名門と呼ばれるクラブを含む複数の国のリーグで活躍してきた。
そんな香川には、昨今度々セレッソ大阪への復帰の噂が上がる。今冬にもセレッソ側が復帰を要請をしたと報じられるも、現時点で本人はJリーグへの復帰は考えていないようだ。
同様にセレッソ大阪から海外挑戦を果たし復帰した選手は、清武弘嗣、乾貴士、柿谷曜一朗、大久保嘉人と多く、戻りやすい雰囲気は醸成されている。加えてこの冬には、大久保嘉人が引退、坂本達裕が海外への期限付き移籍、豊川雄太が移籍と、昨年攻撃を牽引していた選手たちがチームに離れるといった事情もある。
香川自身も、ここ数年は短期間での移籍も多いことから、クラブ側が要請を続けていけばJリーグへの復帰も近いと思われる。その際には、今シーズンは結果的に乾がつけることとなったセレッソ大阪のエースナンバー「8」の行方も含めて、香川の背番号にも注目したい。

岡崎慎司(カルタヘナ/スペイン)
滝川第二高校から清水エスパルスへ加入し、Jリーグベストイレブンに選出されたこともある岡崎慎司は、2011年ドイツで海外挑戦をスタート。イングランド、プレミアリーグのレスター・シティでは「奇跡」と呼ばれた同クラブのリーグ初優勝(2015/16)に貢献。
Jリーグ時代の所属先である清水は積極的な補強を行っており、様変わりして迎えた2021シーズンであったが、結果は振るわず残留争いにも巻き込まれていた。
昨シーズン後半から継続して指揮を取る清水の平岡和徳監督は、2022シーズンに向け選手に対して「無条件で全力を尽くす」「献身性」といった言葉を使って、5つのマニュフェストを掲げているようだ。過去に岡崎を見てきた元レスターのブレンダン・ロジャーズ監督や、元日本代表の西野朗監督は、岡崎に対して「全力を尽くす」「献身的」との評価をしており、もし復帰が叶えば平岡体制にとっても象徴的な選手になり得る存在だろう。
とはいえ、現在所属しているカルタヘナ(スペイン2部)では、途中交代での起用が多いものの出場機会には恵まれている。現段階でのJリーグ復帰の可能性は少ないと思われる。

柴崎岳(レガネス/スペイン)
近年は全国高校サッカー選手権の決勝常連校でもある名門、青森山田高校から鹿島アントラーズへ加入した柴崎岳。現在はスペイン2部のレガネスに所属し、鹿島を出てからは一貫してスペインで活躍を続けている。
鹿島時代にはベストヤングプレイヤー賞やベストイレブンに選出されるなど、チームの中心選手として実績を挙げる。2016年のクラブワールドカップ決勝レアル・マドリード戦では、2得点を含む活躍を見せて海外挑戦へ向かった。代表でも2018年ロシア・ワールドカップの中心選手としてベスト16に貢献し、今現在もまだまだ代表でのポジションを守っている。
現在所属しているレガネスを含めて海外での出場機会には恵まれている柴崎。加えて今冬鹿島には改革の波が来ており、これまでブラジル人監督の起用が多かった中、初の欧州出身監督としてレネ・ヴァイラー監督を招聘。
このような鹿島のクラブとしての姿勢を見ていると、鹿島での柴崎のJリーグ復帰は現状かなり可能性が低いだろうと思われる。

長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト/ドイツ)
サッカー王国の静岡県出身で、高校は同県の名門藤枝東高という経歴だが、選手権の出場はなかった長谷部誠。高校卒業後に浦和に入団し、J1リーグ優勝(2006)やAFCチャンピオンズリーグ優勝(2007)に貢献している。
海外挑戦先は現在に至るまで一貫してドイツで、最初の所属先であるヴォルフスブルクではブンデスリーガ優勝(2008/09)も経験。その後ニュルンベルク、フランクフルトとキャリアを積んできた。代表ではワールドカップ3大会に出場し、キャプテンとしてチームを牽引する姿が目に焼き付いているサッカーファンも多いことだろう。
古巣である浦和では、今冬、阿部勇樹が引退。また槙野智章、宇賀神友弥といった長年中心だった選手たちがチームを離れた。就任2年目を迎えるリカルド・ロドリゲス監督の手腕や、ベテラン選手の穴を新加入選手含め誰がどう埋めていくのかが注目される。
浦和の状態を考えると、海外での経験値や代表でキャプテンシーを発揮してきた長谷部の存在はうってつけのようにも見える。しかし、長谷部のJリーグ復帰に関しては残念ながら可能性がほぼ無いだろう。
というのも、2020年ころからフランクフルトのクラブ関係者も長谷部の引退を示唆している。

吉田麻也(サンプドリア/イタリア)
名古屋グランパスの下部組織からトップ昇格を果たした吉田麻也。ユース時代はボランチを主戦場とするも、当時センターバックの主力であった選手の退団もあったことからコンバートされ、以降はセンターバックとして活躍する。
海外では、オランダ、イングランド、イタリアと3か国でプレー。ケガの影響があった海外挑戦初年(2010)を除いて、センターバックという入れ替えづらいポジションにいながら出場機会はしっかりと確保している。代表では長谷部に代わりキャプテンを務めており、現在でも不動の存在となっている。
名古屋は2021シーズン、連続無失点記録が証明する通り守備力がかなり高いチームとなった。リーグでの最終成績でも優勝した川崎フロンターレに次ぐ2位の失点数という結果に。しかし最終ラインの主力として活躍していた木本恭生とキム・ミンテがチームを離れることもあり、次シーズンに向けて若干の不安が残る。
吉田の名古屋を含めたJリーグ復帰のニュースは現在のところ見られない。一方で、同じく名古屋から海外挑戦を果たした本田圭佑からは、自身のYouTubeチャンネルにて「そのうち麻也が戻る」といった発言も飛び出している。
昨年末にプレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッドが調査しているとの噂が出るなど、30代半ばに差し掛かる年齢にあっても海外クラブから注目されている吉田だ。近く移籍のニュースが飛び込んできても不思議はなく、その中に名古屋をはじめとするJクラブの名前が上がれば、現役日本代表キャプテンの帰還に歓喜するファンは多いに違いない。