11月5日に最終節を残すのみとなった2022シーズンの明治安田生命J1リーグで、静岡県に本拠地を置く2クラブが苦しんでいる。2021シーズンのJ2リーグを制し、J1に昇格してきたジュビロ磐田は最終節を残して18位での降格が決定。
静岡県といえば、長らく「サッカー王国」と呼ばれてきた。1980~90年代の全国高校サッカー選手権において静岡勢は無類の強さを誇り、また日本が初めて本大会に出場した1998年のFIFAワールドカップ・フランス大会でも、日本代表メンバー22人のうち静岡県出身者がなんと10人を占めていた。
そのような理由から付いていた「サッカー王国」という冠だが、静岡勢のJ1での成績によって揺らいでいるのでは、との声が挙がっている。サッカー王国静岡の衰退は事実なのか否か、さまざまな方面から検証した。

静岡のサッカー競技者
まず、日本サッカー協会(JFA)に登録されている選手の数から見てみよう。各年代の男女を合計した都道府県別の数字をみると、2021年度の静岡県の登録数は36,345人。この数字は全都道府県合計の826,906人の約4.4%となる。静岡県の人口が日本の人口の約2.9%であることを考えると、静岡県の競技人口は他の都道府県と相対的に比較して、かなり多いといえる。

静岡のJクラブ数の推移
Jクラブの推移はどうだろうか。Jリーグが誕生した1993年、通称「オリジナル10」と呼ばれていたように、Jリーグ全体でのクラブ数は10だった。そのうち静岡県に本拠地を置くのは、清水エスパルスのみ。翌1994年からジュビロ磐田がリーグに加わり、全12クラブのなかで静岡勢は2クラブとなった。
その後J2リーグ、J3リーグの創設もあってJクラブは増え続け、その過程で静岡勢も増加。2014年より藤枝MYFCが、2017年よりアスルクラロ沼津がJリーグに参加し、現在どちらもJ3リーグを戦っている。
2022年現在、Jリーグ全体のクラブ数は58となっている。同一都道府県に複数のクラブが本拠地を置くことも珍しくなくなった。もっとも多いのは、神奈川県の6クラブ。4クラブの静岡県はその次に多く、都道府県別の人口ランキングが10番目であることを考えると、こちらもかなり多いといえるだろう。

静岡出身のJリーガー
続いて、静岡県出身のJリーガーが現在どれほどいるのかを見てみよう。2022シーズン開幕時点での都道府県別出身者を比較すると、静岡県出身は76人で6位。人口が非常に多く競技人口も多い東京都(1位)や神奈川県(2位)をはじめとした上位5都府県ほどではないにせよ、十分に一大勢力だといえる。Jリーガーをこれほど輩出している実績は、サッカー王国ならではだろう。

静岡出身の日本代表選手
では静岡は、実績においてJリーガーを上回る日本代表選手を輩出することはできているのだろうか。日本代表メンバーの出身都道府県を確認した。Jクラブの数やJリーガーの数と同様、こちらも神奈川県出身者が非常に多い。
これらのことから見えてきたのは、静岡県のサッカー熱が下がっているわけではない、ということだ。裾野となる競技人口は依然として多く、Jリーガーも数多く輩出している。ただし、フランスW杯の頃のようには日本代表選手を輩出できなくなっている。ただ、これは狙って生み出せるものではない。
つまりサッカー王国静岡が衰退しているのではなく日本全体が発展しており、今季の清水エスパルスとジュビロ磐田の苦戦は単純に両クラブの問題ということだ。実際に藤枝MYFCはJ3リーグではあるが上位につけ、J2昇格圏に位置している。サッカー王国静岡に本拠地を置く4クラブは今後群雄割拠の様相を呈し、より一層切磋琢磨していかねばならない時代を迎えるかもしれない。