2023シーズンも残り5試合となった明治安田生命J1リーグ。優勝争い、残留争いともにまだまだ行方が分からず目が離せない。
ここでは、今シーズンJ1クラブで活躍する大卒ルーキー5名を紹介していく。

中野就斗(サンフレッチェ広島)
昨2022シーズンは、FW満田誠(流通経済大卒)が大卒ルーキーとしてブレイクを果たしたサンフレッチェ広島。今2023シーズンもDF山﨑大地(順天堂大学卒)、DF中野就斗(桐蔭横浜大卒)と2名の大卒ルーキーを迎え、いずれもコンスタントに出場機会を得て活躍している。
昨季は特別指定選手としてリーグ戦への出場は1試合にとどまった中野は、今季ここまで25試合に出場。前半戦は途中出場が多かったものの、8月以降は右サイドで定位置を掴みつつある。マーカーを外すドリブルはもちろん、精度の高いクロスを武器にここまで2アシストをマーク。高い攻撃意識も相まって前線で存在感を発揮している。
広島は現在5位につけているが、首位ヴィッセル神戸との勝ち点差は11。残り試合数を考慮すれば、優勝は厳しいと言わざるを得ない。しかし、まさしく満田がそうであったように、ルーキーの成長は次年度以降のチームを確実に強くする要素となる。今季1つでも上の順位を狙うチームの中で躍動する中野には、来季以降も見据えた成長に期待したい。

林幸多郎(横浜FC)
現在最下位で残留争いの只中にいる横浜FC。冬に多くの選手を獲得し、戦力アップを図って臨んだシーズンだけに受け入れがたい現状であることは間違いない。しかし、ルーキーの活躍度は、リーグ屈指と言えるのも確かだ。今季大卒ルーキーとして加入したDF林幸太郎(明治大学卒)は、ここまで25試合に出場している。
チームで3番目に多い出場時間を得ていることからも、指揮官やチームから信頼されていることが見て取れる林。惜しみない上下動で攻撃に厚みを持たせる豊富な運動量は、守備でも十分に活かされている。また、第25節で戦った横浜F・マリノスとのダービー戦では反撃の狼煙を上げる豪快かつ鮮やかなボレーシュートでのゴールもマーク(4-1)。上位チームを相手に貴重な勝ち点3を挙げる原動力にもなっている。
1つ上の順位で残留圏にいる湘南ベルマーレとの勝ち点差はわずかに1。なんとかJ1に踏みとどまるためにも、ルーキーイヤーに存在感を示す林の活躍が不可欠だ。

山田新(川崎フロンターレ)
昨シーズンは2位でリーグ終えた川崎フロンターレ。王座奪還と意気込んだ2023シーズンだったが、開幕前から怪我人が相次ぎ、なかなかベストメンバーを揃えられないまま中位でシーズン終盤を迎えている。しかし、そんな川崎でルーキーながら存在感を放っているのがFW山田新(桐蔭横浜大卒)だ。
FW小林悠、FWレアンドロ・ダミアンら攻撃陣の軸が怪我で出場できない中、山田は25試合に出場。
現在の川崎は、ベテラン選手たちが怪我からの復帰を果たしつつあることに加え、夏には元フランス代表のFWバフェティンビ・ゴミスが新戦力として加入しており、ルーキーの山田が出場機会を得ることは一層難しくなっている。しかし、川崎の下部組織育ちの山田にこそ、不振のチームを救う役割を担ってほしいものだ。

福田心之助(京都サンガ)
大卒ルーキーながら、今2023シーズン京都サンガの開幕スタメンでデビューを飾ったDF福田心之助(明治大卒)。その後は長くリーグ戦のピッチから遠ざかっていたが、DF白井康介がFC東京へ移籍したことで一気に序列が上昇。福田が右サイドバックに定着し、7月16日の第21節名古屋グランパス戦(2-1)以降はスタメンでフル出場を続けている。
福田の魅力は何といっても積極果敢な攻撃参加。オーバーラップやボールを保持時の縦への突破、鋭いクロスと多くのプレーで迷いのない姿が見て取れる。実際ここまで挙げた2ゴールからもその思い切りの良さが見られ、特に第12節横浜F・マリノス戦(1-4)で決めたミドルシュートは、こぼれ球をダイレクトに蹴り込むと言う豪快なものだった。
現在、京都は15位。降格圏(最下位)との勝ち点差は10あるものの、2年連続で下位に沈んでしまっていることは決して本意ではないだろう。

近藤友喜(横浜FC)
低迷する横浜FCを支える大卒ルーキーの1人、MF近藤友喜(日本大卒)。途中出場も多いが、間違いなくすでにチームにとって欠かせない選手の1人と言えよう。2021シーズンから特別指定選手だったことで、ルーキーイヤーながら環境やチームに馴染んでおり、今2023シーズンはここまで25試合に出場している。
近藤が挙げた3つのアシストはチームトップの数字。総得点が25でリーグワーストとなっている横浜FCにとっては、ゴールに直結する働きのできる貴重な存在である。右サイドを駆け上がり、積極的な仕掛けや質の高いクロスを供給する姿からは、早くも期待と同時に風格が漂う。
再びJ2降格の危機に直面している最下位の横浜FCだが、残留圏内である17位湘南との勝ち点差は1。直接対決も残っているだけに、最終盤まで残留争いは続くと見られる。とはいえ、湘南と比較しても得点力に乏しいことは明らかであり、突破力、推進力という明確な武器を持つ近藤の存在は一層重要となるだろう。