4月11日時点で第9節までが終了した2024明治安田J2リーグ。最終節が第38節であることを考えると、全体の約4分の1が終了したことになる。
現時点で首位にいるのは清水エスパルス、2位がV・ファーレン長崎と比較的資金力に恵まれたクラブがJ1への自動昇格圏につけている。

ただし、サッカーは組織で戦うため資金力に恵まれないクラブが健闘するケースも珍しくない。今回は資金力こそ下位ながら、2024シーズンのJ2リーグで上位争いに絡みつつあるクラブを2つ紹介する。

愛媛FCとブラウブリッツ秋田に共通する魅力とは?【J2リーグ2024】

徹底戦術の秋田

1つ目はブラウブリッツ秋田。現在開示されているなかで最も新しい2022年度の経営情報によると、2022シーズンのトップチーム人件費はJ2で最下位の2億5600万円。それでいて今季は4勝2分3敗で現在6位とプレーオフ圏内につけている。

開幕当初は結果が出ず愛媛FCやレノファ山口に連敗でのスタートだったが、第3節に徳島ヴォルティスに勝利すると、そこからは現在首位の清水に敗れたのみ。
栃木SC、いわきFC、大分トリニータに勝利し、ベガルタ仙台水戸ホーリーホックには引き分けと着実に勝ち点を積み重ねている。

秋田の強みは、なんといっても吉田謙監督の存在だ。「徹底を徹底する」「河原の小石は崩れるけれども、僕らが積み上げてきた努力の石は絶対に崩れない。揺るがない。ブレない。これからも、ひたむきにサッカーと。
全力で取り組んでいきたい」「『球際』ではなく『魂ぎわ』」などの名言を数多く残している監督は戦術も徹底している。

第3節の徳島戦では、ボール支配率39%ながらシュート数では23対6と圧倒(2-1)。前半に退場者を出した第9節の大分戦ではボール支配率わずか30%と相手に支配されながらもシュート数で上回り、後半アディショナルタイムに追加点を奪って3-1で勝利した。これらの数字から分かるように、意図的にボールを保持しようという考えはほどんどない。

4-4-2で守備を固め、そこからショート・ロングを交えたカウンターで準備が整っていない相手の守備を攻略する。また、カウンターが直接得点に繋がらなくとも得意のセットプレーに繋がれば悪くない。
シュートに繋がる確率は30%を超え、リーグトップの数字を記録している。

攻撃面で結果を出しているのがFW佐藤大樹。開幕当初は途中出場が続いたが、第3節の徳島戦で同点ゴールを挙げるとそこからスタメンに定着。現在2試合連続で得点しており、ここまで計4得点を挙げている。プレーオフ圏内まで浮上した秋田が、この先さらに勢いに乗るのか注目したい。

愛媛FCとブラウブリッツ秋田に共通する魅力とは?【J2リーグ2024】

中央を崩す愛媛

2つ目は、2022年度のトップチーム人件費(当時J3所属)が2億7400万円で当時のJ3で6番目の数字だった愛媛FC。
昨2023シーズンのJ3で優勝しJ2に復帰した昇格組ながら、現在は秋田と同じ4勝2分3敗でプレーオフ圏内まであと一歩の7位につけている。第6節以降4試合負けなしの2勝2分と好調で、第8節ではリーグ最少失点の仙台に2-1で勝利。第9節では現在3位のファジアーノ岡山と対戦。退場者を出しながらも後半アディショナルタイムまでリードを保ち、最後は力尽きたものの2-2の引き分けに持ち込んでいる。

愛媛の強みは中盤と組織力にある。昨シーズンのJ3でベストイレブンにも選出されたMF谷本駿介がボランチに君臨。
ボールを奪う部分から攻撃の組み立てまでを行いつつ2得点3アシストを記録している。また、左右のサイドハーフに入るMF窪田稜やトップ下のMF石浦大雅は技術が高く、少ないボールタッチで繋ぎながらゴール前に迫る。ほかにも昨シーズンのJ3でMVPを受賞したFW松田力が最前線で献身的な守備をしながら2得点を記録。

2013年~2014年に愛媛を率いた経験を持ち、2022シーズンから第2次政権となっている石丸清隆監督は、J2でも屈指の組織力を植え付けることに成功している。チームが1つのまとまりとなって動き、全体で守備をしながらボールを奪い細かく繋いで相手を崩しにかかる。多くのクラブが突こうとするサイドではなく、ゴールに最も近い中央を積極的に攻略しようとするのも愛媛の特長だ。
最終的に力負けする試合はあっても、今の愛媛はどこと対戦しても内容的にある程度拮抗させられるだけのものを持っている。

また若い選手が多く、今季の愛媛に注目すると数年後のJリーグも楽しめそうだ。つまりは来季以降、中心選手が他クラブに狙われる可能性も高いが、それだけ有望株が揃っているということでもある。現在すでに首位の清水、2位長崎、3位岡山との対戦を終えており、ここからさらに順位を上げることも十分考えられるだろう。昨季に続き今季も昇格となれば、2シーズンで2カテゴリー上昇も夢じゃない。

今回挙げた秋田と愛媛は開幕戦で対戦し、拮抗した試合ながら1-0で愛媛が勝利している。スタイルは全く異なるが、順調に勝ち点を重ねるこの2クラブ。今後どんな活躍で上位争いに加わるのか目が離せない。