2. 中期経営計画の進捗状況
2024年5月に発表した3ヶ年の中期経営計画では、2026年3月期までの2年間をBPO関連事業部門の市場環境変化に対応し持続的な成長を実現するための体制構築期間と位置付けている。2024年3月期下期に取り組んだ取引先地方自治体数拡大と業務領域の拡大、民間企業へのBPO取り組み強化に加えて、顧客のニーズや顧客の業種にきめ細かく対応できることをコンセプトとする新規ビジネスモデルの開発や、生成AI等の導入によるDX化を推進するなどビジネスプロセスの再構築に取り組み、顧客満足度の向上、業務改善・品質向上のための体制強化を図る方針だ。
2026年3月期までの2年間は「トライ&エラー」を繰り返しながら事業活動を推進するため、売上高増加率は10%弱、営業利益率も7.5%前後で推移する計画となっており、これら取り組みの成果が顕在化する2027年3月期に売上高増加率が15%に加速し、営業利益率も8.3%と上昇する計画である。なお、政治情勢等の状況によって、同社が想定していた地方自治体や中央官庁案件の発注時期や規模の変更等が発生し、2026年3月期の業績にも大きく影響する場合には、通期業績予想とともに中期経営計画についても見直しを検討することにしている。
成長戦略として、1) 既に取引を開始している地方自治体の周辺自治体(人口10万人以上の都市等)との取引を深耕し、取引先地方自治体数及び業務領域の拡大を図ることで収益基盤の構築を図る、2) 新規業務領域等の専門分野に対して、積極的に深堀し、特に長期継続的な案件の積み上げを図っていく、3) 習熟度の高い人材育成を図り、顧客満足度の向上と業務改善及び品質向上の体制を強化する、の3点に取り組む方針だ。
また、2025年3月期の重点施策としては、1) 取引先地方自治体数の拡大に伴う営業活動の広域化、エリア展開、2) 長期継続案件となりうる窓口業務や総務関連業務の受注獲得、3) 民間BPOへの取り組み強化、4) 継続性と収益性を意識した営業活動の展開、5) 業務改善、運用品質向上のための体制強化と顧客満足度の向上、の5点を挙げている。
取引先地方自治体数については、2025年3月期中間期末で177地方自治体と順調に増加しており、2027年3月期までに230地方自治体に拡大することを目標としている。地方中核都市を起点とした広域展開、複数案件獲得を推進することで取引先地方自治体数及び取引規模の維持向上を図っていく。全国に多極分散していくことを想定して、品質管理の強化や中核人材の採用と育成、サービス体制の構築を計画的に推進していく方針だ。
地方自治体のBPO案件の実績としては、窓口関連業務や社会福祉関連業務、各種申請事務関連業務、給付金・補助金・助成金関連業務、地方自治体DX・マイナンバー活用業務など多種多様となっている。また、専門的、高度なスキルを要する業務は、当該業務に通暁している若しくは経験を有することが必要であることから、現在、社員の教育、育成に注力する一方、IT化、DX化を推進するなど、取引拡大や業務領域拡大のため様々な取り組みを進めている。また、同社単独のみならず、それぞれのテーマに強みを有する大手BPO事業者との関係構築についても継続して拡充し、大規模プロジェクトが始まった場合には多様なルートで参画し、受注規模の最大化を実現していく考えだ。
なお、計画の前提となるKPIとして、BPO関連事業部門においては、地方自治体数は2024年3月期の80地方自治体から2027年3月期は135地方自治体まで拡大し、また1地方自治体当たりのBPO案件の複数案件指数を1.5倍から2.0倍に増やしていく。
収益性と成長性の二軸で事業ポートフォリオを見ると、成長性かつ収益性の高いBPO関連事業部門は積極投資(人材投資、IT&DX投資、M&Aなど)により、持続的成長と高収益の維持・向上に取り組む。また、収益性が低いものの高成長を続けている製造系人材サービス事業については、成長過程にあるとの認識で引き続き取引基盤の拡大を優先し、新規拠点の開設等を推進していく。収益性、成長性が低いCRM関連事業部門や一般事務事業部門については、収益構造を改善し安定収益を確保しながら、BPO案件につなげていくフック役の機能として今後も継続していく。そのほか、フィールド(営業及び営業代行)のBPOサービスは、新規顧客の開拓を進めて売上成長を目指す。また、JBSが展開しているペイロール(人事給与)のBPOサービスについては、企業のアウトソーシングニーズが旺盛なことから営業体制を強化して規模の拡大に取り組む意向だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)