レビュー

「2050年、日本は持続可能か?」これが本書のテーマだ。日本はいま危機的状況にあるが、それをどれだけの日本人が自覚しているだろうか。

政府の債務残高は1000兆円にのぼり、格差が拡大。貧困層が増え、人々は所属するコミュニティを失い、社会的に孤立している。日本の現状は「持続可能性」とはほど遠い。
こうした状況を打開するには、社会のデザインを変えていかなければならない。著者は東京などの大都市にすべてを集中させるのではなく、地方に生活の拠点を分散させていくことが重要だと主張している。地域で経済が循環し、ゆるやかなコミュニティ的つながりが感じられる社会を構築する、人々の生活の質や幸福度が上がるような都市設計だ。ローカルから出発し、それをナショナル、グローバルと積み上げていくのが、今後の世界標準のスタイルとなっていくという予想である。
日本はいまだ「景気回復によっていずれすべての問題が解決する」という幻想を捨てきれていない。しかし問題はもっと根本的なところにある。社会の在り方そのものを変えていかなければ、日本は持続可能にならないだろう。
日本に住む人にとって、これは他人事ではまったくない。ここに述べられている危機的状況は他でもない、私たちが暮らしているこの国の話なのである。

本書の要点

・現在の日本社会は「持続可能性」という点で危機的状況にある。政府財政のひっ迫、格差拡大による少子化と人口減少、コミュニティの崩壊などが問題視されており、これらを解決するには「地方分散型」社会がカギとなる。
・人口増加の時代は拡大・成長の時代だが、人口減少の時代は環境と福祉の時代である。人口減少社会はかならずしもネガティブな影響ばかりを与えるのではなく、ポジティブな可能性もそこに見出せる。
・人口減少社会では、それぞれの地域が持つ固有の価値や風土的・文化的多様性への人々の関心が高まっていき、「ローカル志向」が浸透していく。



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