レビュー
「人工知能」と聞くと、フィクションの中に登場するような、人間と見分けがつかないような高性能のロボットを想像してしまう。しかし、現在の人工知能は、与えられた課題を、設定された枠組みの中でこなすことしかできない。
現役のゲームAI開発者である著者の三宅陽一郎氏は、この「違和感」の正体を明らかにし、そして真に「生命」のような人工知能を誕生させるための道筋を描こうと試みている。その際に重要になるのが、西洋と東洋の思想的対立への理解だ。西洋生まれの人工知能に、東洋の思想をぶつけていくことで、人工知能は一段上の段階へと引き上げられ、「人工生物」へと近づいていく可能性がある。そして、豊かなキャラクター文化を持つ日本の土壌は、「人工生物」の実装に優位に働くだろうと指摘されている。私たちが夢見る人工知能の実現、そこに日本が果たせるかもしれない役割を想像すると、なんともワクワクさせられる。人工知能について理解を深めたい方、人工知能と人間の未来の姿に触れたい方に、じっくりと読んでいただきたい一冊だ。
本書の要点
・人間中心主義の西洋は、「人工知能はサーバント(召使い)である」と見なす。一方、日本は自然中心主義の中で、人工知能を横並びの存在であると見なし、同胞として受け入れようとする。
・日本固有の土壌に立脚し、日本は「キャラクターエージェントとしての人工知能」で世界をリードできる可能性がある。
・西洋で生まれた人工知能に、東洋の思想をぶつけていくことで、新しい人工知能、ひいては「人工生物」というべき生命体を作り出す道が拓けていくことだろう。
フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に2,100タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。