レビュー

ここ10年で、ほぼすべての人の生活水準は劇的に良くなった。極貧生活を送る人の数は史上はじめて10パーセント未満に減ったし、マラリアの致死率も急激に下がった。

戦争もまれになった。電話での会話だって、Wi-Fiのおかげで基本的に無料だ。もちろん悪くなったこともあるが、良くなっていることのほうが圧倒的に多い。
世界は過去も現在も未来も、悪い方向ではなく良い方向に進んでいるのはイノベーションのおかげだ――{{bold}}『繁栄{{/bold}}』や{{bold}}『赤の女王』{{/bold}}などの名著の執筆者として知られる著者はそう主張し、「合理的な楽観主義者」を名乗る。彼によれば、イノベーションとはエネルギーを利用してありえないものをつくり、それを広める新たな方法を見つけることだという。
本書の原題は「HOW INNOVATION WORKS」というシンプルなものだが、邦題に「人類」という単語があるように、イノベーションを軸に壮大な人類史を描き出し、新しい世界の見方を提示している。
前半で「エネルギー」「公衆衛生」「輸送」「食料」「ローテク」「通信とコンピュータ」「生命」といった具体的なイノベーションを紹介し、後半でそれらに共通する本質について考察するという構成だ。本要約ではその中から、「エネルギー」と「生命」のイノベーションを主に取り上げるが、どのページを開いても新しい発見があるに違いない。

本書の要点

・イノベーションとは、発明を実用的かつ手ごろな価格で、信頼できるかたちで定着するところまで発展させることだ。ゆえに発明そのものより、はるかに大きな意味をもつ。
・イノベーションはゆるやかに生まれるものであって、突然現れるものではない。そこに劇的なものはなにもない。


・イノベーションはつねに協力と共有を必要とする。独りの人間だけでできることは、ほぼない。
・イノベーションは、振り返ってみればあきれるくらい予測可能に思えるが、実際には予測しようとしてもまったくもって不可能だ。



フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に2,100タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。