レビュー
「未来」ほど曖昧な概念はないかもしれない。近くもあり遠くもあり、遥か彼方のような気もするが、確実にやってくる時間。
著者・落合陽一氏は「ちょっと先の時間」、つまり「半歩先の未来」について考えることが好きだという。落合氏によると、半歩先の未来とは、五感に接続されているように感じる手触りのある時間である。半歩先にある現実感を持った未来を想定し続けることが、その先の未来へ繋がるという。
本書は、落合氏が2019年1月から2021年3月の2年間にnoteで書き記した文章を編集し、時系列に掲載している。SNSで炎上が起こる仕組み、分かりにくいコンテンツと思考の関係、加速的な社会で自分を深化させる方法など、身近なトピックを手繰り寄せながら、深い海へと潜るような思索が繰り広げられている。
雰囲気が一変するのは2020年3月である。コロナショックに見舞われ、世界中がパニックに陥った頃だ。そこからは、ウィズコロナによる社会構造の変化やディストピア要素を含んだスマートシティ構想へと話が展開する。読み進めるうちに、短い間に社会はこんなに変わってしまったのだと改めて気づかされた。
社会はこれからも変わり続けるだろう。望ましい未来を創造するために私たちはどうすべきか。
本書の要点
・SNSは時々「換気」した方がいい。暴言や陰口ばかりのアカウントはアンフォローするなどし、気持ちのいいコミュニティを作る努力をすべきだ。
・世の中には「分かりやすいコンテンツ」が溢れている。しかし、思考のスイッチが入るのは「分かりにくいもの」だ。
・ウィズコロナにより、デジタルとアナログの乖離が進んでいる。キャッシュポイントの変更やデジタルの付加価値の再検討が必要だ。
・社会システムに監視の目が組み込まれる「ディストピア」が現実になりつつある。個人の権利と集団の利益を共存させる世界の構築が課題である。
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