レビュー

効果的なリーダーシップやマネジメントの新常識を学ぶうえで格好の一冊が登場した。職場での立場がフォロワーからリーダーになるとき、そしてメンバーの多様性に直面したとき、人間関係の難しさに頭を悩ませた経験はないだろうか。


組織心理学者の著者は、そうした読者に向けて、数々の最先端のデータや研究をもとに客観的な視点を与えてくれる。例えば、職場に嫉妬深いメンバーがいて、チームの業務遂行に支障が出てしまっている場面を想像しよう。そのメンバーとのかかわりを避けたいと思うかもしれないが、部下との関係となるとそうもいかない。そんなとき、一見厄介に思われる嫉妬にもポジティブな側面があるというと驚くだろうか。著者は、妬みという感情がチームの活性化、パフォーマンス向上への起爆剤にもなりうることを解き明かし、リーダーがとるべき戦略も提示してくれる。
本書では、妬み、温度差、不満、権力、信用(不信感)の5つのテーマで、組織に根づくネガティブな関係をポジティブな関係に変えていくための処方箋を導き出していく。
もちろん、難解な内容ではないので安心していただきたい。「人間の本性」
を利用しているため、応用範囲が広く、「明日から職場で何か一つ試してみよう」と思えるアクションがちりばめられているのが、本書の魅力でもある。
組織心理学が自身の身を守り、チーム力をさらに高めてくれる強力な武器であることを実感できるだろう。

本書の要点

・人間の非合理的な判断や行動の背後には、「自分が危険な状態や脅威にさらされたときに生じる感情」がある。
・中でも最も厄介な「妬み」には「悪性の妬み」と「良性の妬み」がある。良性のものにはパフォーマンスを向上させる力もある。


・コミュニケーションは「熱伝導」である。組織内に温度差を生まないためには、リーダーによるメンバーへの声かけや情報の開示などにより、情報が伝達しやすい風土や環境をつくることが重要となる。



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