レビュー

スマートフォン、ファストファッション、牛丼やハンバーガー。こうした私たちの生活に欠かせないさまざまなものが、実は途上国の社会問題と深く関わっていることを、本書は柔らかい語り口で教えてくれる。


本書のタイトルにもあるSDGsの取り組みは、企業だけでなく小中学校の研究課題にも頻繁に取り上げられるほど、私たちの生活に普及してきている。しかし、もしその取り組みに自発的な意思が欠けているとすれば、それは本質的な社会貢献とは呼べないのではないだろうか。著者の課題意識はそのようなところにある。内から湧き出るような意思を育むためにも、まずはSDGsの背景にある社会課題と私たちの生活をつなぐ真実を知ろう、というのが本書の主旨である。
本書の特長としては次の2点が挙げられる。1つ目は、著者自身が途上国の援助の現場に身を置いてきた経験からくる強い説得力である。そして2つ目は、データとファクトに対するこだわりだ。後者については、『FACTFULNESS』の著者ハンス・ロスリング氏を範にしているという。
著者はフォロワーの多いユーチューバーでもある。重くなりがちなテーマを、明るく、わかりやすく解説した内容ばかりで、著者の正義感の強さがひしひしと伝わってくる。そんな著者の使命感が込められた本書は、「データを基に世界を正しく見る習慣」を身につけ、実践していく際の道しるべになってくれるだろう。

本書の要点

・私たちの善意の寄付が、途上国の人たちの自立する力を奪い、貧困からの脱却を妨げる原因になっている。


・日本では一人当たり年間8着以上もの衣料が、誰の手に渡ることもなく廃棄されている。
・食肉をつくるには大量の土地と水が必要であり、それが森林破壊などの環境破壊の原因にもなっている。
・スマートフォンには、アフリカの武装勢力の資金源であるレアメタルが使われている可能性が高い。私たちの生活と途上国の問題は密接に関わっており、こうした社会問題に関心を持ち続けることが重要だ。



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