レビュー

世界の情報量は増加を続けて今後も加速の一途をたどる、経済においても中国の次はインドやアフリカ諸国の拡大が予想される――。
普段耳にするこうした見解ははたしてその通りだろうか。

本書はこれまで大加速化に晒され、その環境に慣れきった私たちの意識に変革を促す。著者はオックスフォード大学で地理学の教鞭を執り、デジタル世界地図サイト「WORLD MAPPER」の共同開発者でもある、ダニー・ドーリング氏である。さまざまな国や時代の、さまざまな統計データを用いて500ページ超にわたり、「減速」に向かう世界のありようを詳らかにする。「あらゆることがスローダウンしている。そして、スローダウンはとてもよいことである」と主張する。
本書は債務、データ、気候、気温、人口動態、出生数、経済の7つをテーマに、スローダウンする世界を読み解いていく。
テーマごとに用意された、時代の流れにおける変化の度合いを示した図表「位相ポートレート」は、数百年、ときに数千年の人類の歩みを俯瞰でき、大変有用だ。この「位相ポートレート」がスローダウン現象の理解をサポートし、本書を読み解く重要なキーとなる。
何かと「成長・飛躍・進歩」の必要性が叫ばれる今こそ、お読みいただきたい一冊だ。ややもすると焦燥感に駆られていた心が落ち着き、大局的なものの見方ができるようになるだろう。

本書の要点

・世界ではあらゆることがスローダウンし、これまで進んできた「大加速化」は終わろうとしている。
・スローダウンはとてもよいことだ。

仮にこのまま世界が加速し続ければ、破滅に向かって突き進むことになる。
・スローダウンをうまく把握するには、時間、変化、そして変化の速さを同時に示すことのできる位相ポートレートが有効である。
・過去5世代の間に起きた急速な変化は、歴史的に見て極めて稀な現象だ。あらゆることが安定に向かう現代では、変化のペースは遅くなる。



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