レビュー

本書は非常に刺激的な書籍である。デジタル技術が席巻している現代に、アナログ時代の台頭を高らかに宣言しているからだ。

デジタルの限界があらわになったとき、アナログはデジタルを超えて次の時代を支配するというのだ。科学史家の著者は、壮大な歴史に踏み込みながら非常に革新的な主張を展開している。
そもそもデジタルとは、指を意味するラテン語「digitus」を語源にもち、離散的な整数のようにカウントできる数の集合を意味する。つまり、明確に数えて、区切ることができる、歯切れのよいものだ。一方、アナログとは、簡単に区切れない連続した量を意味する。そう考えると、人間社会にとって自然な状態とはアナログであり、その連続性にこれまで到達できていなかったテクノロジーが及びつつあるというのは、大きな驚きである。その発見に至るまでの軌跡をたどれることも、本書を読む意義といえる。
要約では、本筋に大きく絡む0章と9章を中心に紹介している。だが、一見したところ関連性が薄そうな1~8章を読むことで、本筋の面白さがさらに立体的に浮かび上がってくる仕立てになっている。
「飼いならされたAI」から「野生のAI」へ。大自然の中で、より大きな宇宙の中にデジタルとアナログが調和する姿を見出し、人間のあり方を追求する著者ならではの情報宇宙観を、じっくりと味わっていただきたい。

本書の要点

・自然と人間とマシンが関わる運命には4つの時代区分がある。

第四の時代では、アナログが支配権を持つようになる。
・アナログ・コンピューティングとデジタル・コンピューティングの違いは連続性にある。前者は時間とともに値がなめらかに変化する連続関数を扱う一方、後者は値が正確に変化する、離散的な関数を扱う。
・テクノロジーが進歩するにつれ、アルゴリズムよりも関係性のマッピングが重要性を増す。機械は連続性を手にし、デジタルはアナログへ置き換わっていく。



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