レビュー

丁稚奉公から立身出世し、一代で松下電器産業(現・パナソニック)を築いた松下幸之助氏。「経営の神様」として信奉者も多い人物だ。

そんな松下氏の考える「指導者としての条件」をまとめたのが本書である。
その項目は102カ条にも及ぶ。1つあたり見開き2ページで、かつ非常に伝わりやすい文章で書かれている。それぞれ歴史上の人物のエピソードを織り交ぜた構成になっており、松下幸之助氏の思考の道筋を追いやすい。経営手法というよりは「指導者たるもの、こうあるべし」という内容で、日々の心がけから考えさせられる。
たとえば熱意を持つことの重要性について松下氏は、「なんとしてもこれをやりとげようという熱意があって、はじめて知恵もわき工夫も生まれてくるのである 」とした上で、「指導者は才能なきことを憂うる必要はないが、熱意なきことをおそれなくてはならない 」と書いている。
熱意は人を動かす原動力だ。熱意のある人のところには、自然と人材が集まってもくる。商売にせよ仕事にせよ、結局は熱意こそが重要であって、才能がないことを悲観せずに精進すれば道も開けていく。そのようなことを伝える一節だ。
単行本の初版発行は1975年であり、ずいぶん昔のものではあるが、日本が経済大国として世界に大きな存在感を示していた時代の本であることを考えると、今の日本人が学ぶべき点も多いと感じた。いまの日本人が忘れてしまった、「日本人の美徳」を再認識するには最適な本といえよう。

本書の要点

・大事を成し遂げる際に一番必要な心がけとは「命をかける」ことだ。その思いがあってはじめて、どんな困難にも対処できる。
・志を立て、その達成を目ざして仕事をしていくことで、あなた自身に力強さが生まれる。
・結局のところ、最後に人を動かすものは指導者の「誠実さ」であることを知るべきである。



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