レビュー

レイチェル・カーソンによる世界的ベストセラー『The Sense of Wonder』の待望の新訳が登場した。本書は、独立研究者・森田真生氏による新訳とともに、その流れを汲んだ自身のエッセイを紡いだものである。

「センス・オブ・ワンダー」という言葉は、SF愛好家にとっては馴染みが深い。SFでは未知の生態系を精緻に描写し、斬新な世界観を通じて、読者の知的興奮を喚起させる。
カーソンの提示する「センス・オブ・ワンダー」も、普段私たちが見過ごしている精緻な自然を見つめ直せるよう促してくれるものだ。自然は驚きと新鮮さに満ちていて、畏れや知的好奇心をかきたてる。
森田氏は息子たちとの触れ合いを通じ、新たな自然を再発見し、自然の中に生きる自分たちの姿を見つめ直していく。こうしてカーソンの魂を引き継ぎ、かの有名な『沈黙の春』にも橋をかけていく。
それは環境問題の本質に迫るものでもある。
森田氏の鋭くも優しい感性によって、自然と私たち人間との関わりが躍動感をもって描き出される。同時に、カーソンの著作を通じて環境問題の本質をとらえ直すきっかけを与えてくれるのだ。カーソンと森田氏による、美しい世界観と鋭い省察を味わってみていただきたい。目を見開くような体験が待っているはずだ。

本書の要点

・子どもには自然の精緻さに気付く感受性が備わっている。


・カーソンは子どもが「センス・オブ・ワンダー」を失わないためには、一人の大人の助けが必要と綴っている。森田氏は、大人も子どもの手を借りることで「センス・オブ・ワンダー」を取り戻せると考えている。
・カーソンは観察の人であった。その鋭い視線は、美しいものだけでなく、破壊されていく地球環境も見つめていた。そして、人間が環境に与える影響について警鐘を鳴らした。



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