レビュー

「立つ鳥跡を濁さず」。引き際がいさぎよく、さわやかな様子を指すことわざである。

日本には引き際がよいことを称える文化が根付いてきた。だが、一個人のキャリアにおいては、「なんとなくマンネリ。でも楽だし、現状維持」ということも多い。何らかの制約や葛藤から仕事を辞められないという方もいるだろう。
転職や仕事を始めるときの心得は様々な本で扱われてきた。では、仕事を辞めるときには、どんな準備をし、何に取り組むとよいのか? これまで語られてこなかったテーマに切り込んだのが『仕事の辞め方』である。

著者の鈴木おさむ氏は、数多くの人気番組を手がけてきた放送作家である。40代後半くらいから「自分の生き方にワクワクしていない」と気づいたそうだ。そして本書発刊時の51歳、放送作家と脚本の仕事を辞めると宣言した。どんなサインがあれば仕事を辞めることを検討するとよいのか、辞める前に何をすべきなのか。こうしたテーマがリアリティを持って語られる。要約者は、本書はフライヤーでも紹介した『人生後半の戦略書』の実戦編という印象を受けた。

「今のままでいいのだろうか」と疑問を抱く方や、マンネリの兆しを感じている方に、本書は「引き際の美学」を提示する。同時に、「ワクワクすることをできているか?」と人生を問い直すきっかけを与えてくれる。これからのキャリアの方向性を明確にしたい方にピッタリの一冊だ。

本書の要点

・鈴木氏は自分の人生を俯瞰で見ることを大事にしている。人生に満足していないのなら、自ら大きく舵を切る必要がある。その一つの方法が「仕事を辞める」ことだ。


・大事なのは、これから10年、今の仕事をしている自分にワクワクするかどうかだ。仕事で興奮とワクワクが薄れることは、ビジネスセックスレスであり、辞めることを考えるサインでもある。
・40代のうちに「縁の円」を増やすことで、仕事を辞めた後の選択肢が広がっていく。



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