レビュー

「毎日へとへとになるまで働いている」「連日、深夜まで残業」……こうした声を聞いたとき、あなたはどんなビジネスパーソンを想像するだろう。多くの人は、仕事を押し付けられた若い社員を思い浮かべるのではないだろうか。

しかし、本書のタイトルを見ればわかる通り、これらはいま管理職に起きていることだ。そして、そんな上司をすぐそばで見ているメンバー層は管理職になりたがらない。これを著者の小林祐児氏は「管理職の罰ゲーム化」と呼んでいる。
働き方改革が進む裏で、管理職の激務っぷりは悪化の一途をたどっていた。社会からは共感されず、部下とのギャップに苦しみ、「それが管理職の仕事だから」「自分も若い頃はそうだったよ」「修羅場を乗り越えてこそ成長するはず」と考える経営者や人事部門とすれ違う――。こうした管理職の悲劇が、本書では生々しく綴られている。
本書の最大の強みは、やはりその科学的な視点だろう。本書で論じられる「罰ゲーム」は、著者が丁寧に集めたデータと現場の声によって支えられている。読んでみれば、日本企業の置かれている現状に強い危機感を持つはずだ。そして、「いったいどうすればいいのだろう」と、経営者ならずとも頭を悩ませることになるかもしれない。
本書では、「罰ゲーム化」を修正する4つのアプローチが明確に提示される。いままさに悩み苦しんでいる管理職、「管理職にはなりたくない」と怯えるメンバー、そして「管理職研修を実施すれば改善するだろう」と楽観的に捉えている経営者や人事部門をはじめ、多くのビジネスパーソンに読んでほしい一冊だ。

本書の要点

・働き手からすれば、もはや管理職の仕事は「罰ゲーム」に近い。
・経営者や人事部門は「管理職の負荷が高いのは、管理職自身のマネジメント・スキルが足りないからだ」という「筋トレ発想」に陥り、管理職研修に頼ろうとしている。だが、これは逆効果だ。
・管理職の「罰ゲーム化」を修正するためには、フォロワーシップ・アプローチ、ワークシェアリング・アプローチ、ネットワーク・アプローチ、キャリア・アプローチの4つが効果的だ。



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