レビュー

本書は、ニュース解説でおなじみの池上彰氏が「想像力」について綴った一冊である。「世界価値観調査」によると、日本人は子どもに身につけさせたい性質の1つに「想像力・創作力」を挙げている。

だが実際、日本人の想像力が高いとは言い切れないのが現状だ。
日本人の「今あるものをよりよくする“カイゼン”に長けた国民性」は、高度経済成長期の日本を牽引して世界に存在感を示した。だが今では、イノベーションを起こし続ける海外企業に遅れを取り、日本経済は低迷したままだ。生成AIの登場により、その差はますます大きくなっている。
多様化するニーズを読み取って迅速に対応することは、ビジネスにおける成功の要諦だ。そこに必要なのは、未来をダイナミックに描く力、その実現に向けて逆算する力、他者のニーズを汲み取る力、チームで協働する力などである。この原点となるのが「想像力」であり、著者は「想像力は世界を変える」と語っている。
実際、多くの新技術は人間の想像から生まれている。携帯電話もタッチパネルもAIも、元はと言えば「こんなものがあったらいいな」という誰かのアイデアだ。その時点ではありえないようなことも、自由に想像を羽ばたかせることで未来を築くことができるのだ。
本書では、「わかりやすい解説」では右に出る者がいない著者が、想像力の重要性とその養い方を教えてくれる。読むだけでも凝り固まった考えがほぐれ、想像力が広がりそうな一冊だ。

本書の要点

・人間がAIと渡り合っていくには「想像力」が欠かせない。本書では自分以外の他者を想像する力を「ヨコの想像力」、未来の世界や自分につながる想像力を「タテの想像力」と呼ぶ。
・日本人の想像力が伸びにくい原因は、過度なリスク排除や前例主義などにある。
・想像力のリミッターを外すには、新たな場所で生活したり、違う視点を持つよう意識したりすることなどが有効だ。
・「あったらいいな」と未来を想像することが、科学や技術を発展させる原動力になってきた。



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