レビュー

「説明力」を高めるために、「書き方」「話し方」といった説明の「スキル」を覚えて実践しようと努力している方もいるでしょう。でも、「スキルアップ」だけに意識が向いているうちは、残念ながら「説明上手になる」というゴールへは近づけません。

――本書の「はじめに」にある、印象的な一節だ。
では、どうすれば「説明力」を高められるのか。著者の答えは「観察すること」だ。観察によって、自分と相手の間にある「差」と、相手の状況やニーズを把握することが、説明上手になるための第一歩だという。要約者はこのパートを読んで、「説明」に抱いていたイメージがガラリと変わった。
本書の著者、深谷百合子氏はかつて、ソニーグループ、シャープで技術職・管理職として勤務していた。そこで、専門用語を噛み砕いて説明する能力が評価され、工場見学者への説明やメディア取材への対応を任されるようになったそうだ。その後、中国の国有企業にヘッドハンティングされ、100人以上の中国人部下を育成した経験も持つ。本書ではそんな深谷氏が、報告、連絡、相談、営業、プレゼン、部下育成、会議、案内など、幅広いシーンで使える「説明」のポイントを教えてくれる。
本書の特徴のひとつは、著者の飾らない書きぶりだ。例えば「いいたとえができると、『やった!』と嬉しくなります」という一文がある。より良いたとえを見つけようと努力する著者の姿を想像し、思わず心が和んだ。
あなたも、親切に教えてくれる上司や先輩が近くにいるような気分で、楽しく読み進められることだろう。

本書の要点

・誰かに何かを説明する際は、「自分が言いたいこと」よりも「相手の聞きたいこと」を伝えるようにしよう。
・常に結論を先に伝えるのが最善だとは限らない。まずは「スタート地点」を共有するべきシーンもある。
・報告・連絡・相談では、「私見」よりも「事実」を伝えよう。一方、相手から意見を求められたときは、「私見」→「事実」の順番が正解だ。
・お客様の「欲しい」という気持ちを引き出すには、商品のスペックよりも、商品によってもたらされる「嬉しい変化」を伝えるとよい。



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