レビュー
メルカリ、アリバイ、アウディ、エトセトラ、『ハリー・ポッター』の呪文「クルーシオ」……あなたはこれらの共通点がわかるだろうか? 答えは「ラテン語」だ。冒頭に挙げた言葉はいずれもラテン語か、ラテン語由来の言葉である。
本書によると、ラテン語は「イタリア半島中西部の、一都市の言語として産声を上げた言語」であり、フランス語やスペイン語の元になっただけでなく、英語の語彙にも多大なる影響を及ぼしてきた。たとえば英語の「push」はラテン語の「pulso」に由来している。見比べてみると、ふたつの単語がそっくりであることに気づくだろう。
現在、ラテン語を公用語とする国はバチカン市国のみで、そこでも日常会話はイタリア語でなされているという。つまり日常的にラテン語で会話する人は存在しないと思っていい。それでもラテン語は現代を生きる私たちのすぐそばに隠れているのだ。
本書の著者「ラテン語さん」は、X(旧Twitter)でラテン語の魅力を日々発信し、9.6万人(2024年6月時点)のフォロワーを抱えている。本書はそんなラテン語さんが、世界史、政治、宗教、科学、現代、日本という6つのテーマとラテン語のかかわりを解説した一冊だ。古代ローマで選挙の候補者が白い服を着ていた理由、「鳥占い」とラテン語、『ハリー・ポッター』に登場するラテン語など、興味深い話題が目白押しである。
本書はラテン語の知識をいっさい持たない人でも楽しく読み進められる仕立てになっている。要約を読んで少しでも興味を抱いたら、ぜひ本書を手に取り、ロマンあふれるラテン語の世界に飛び込んでみてほしい。
本書の要点
・ラテン語は古代ローマの勢力拡大に伴って通用する地域を広げていき、その後もヨーロッパの書き言葉に広く使われた。
・ファシスト党の前身となったグループ「イタリア戦闘ファッシ(Fasci italiani di combattimento)」のfasci「ファッシ」は「束」を意味するイタリア語で、語源はラテン語のfasces「束」だ。
・英語圏では、魔術師はラテン語を理解するものだという認識がある。『ハリー・ポッター』シリーズに出てくる呪文にラテン語の要素が含まれているのは、その認識に沿ったものだ。
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