レビュー

「言われた仕事はやるが、会社への過剰な奉仕はしない」「顧客との面倒な付き合いは断る」「急ぎの仕事が発生しても残業はしない」。こうした最低限の業務しかしない状態を、「静かな退職」と呼ぶ。

これはアメリカのキャリアコーチが発信した「Quiet Quitting」の和訳である。なぜ、「静かな退職」が日本でも起きているのか。
さて、「静かな退職」について、読者のみなさまはどう感じるだろうか。中には、「会社へのコミットメントが低い社員が増えると、生産性も下がってしまう」と危機感を覚えた方もいるかもしれない。一方で、欧州やアメリカでは、一部のエリート層を除くと「残業をせずに最低限求められた業務を遂行する」のが、ごく当たり前の光景であることが明らかになる。むしろ、「手を抜けば抜くほど、労働生産性は上がる」といった意外な真実が浮かび上がってくる。
雇用ジャーナリストの著者は、日本で「静かな退職」が生まれた社会の構造変化を、豊富なデータをもとに解説する。さらには「静かな退職」を選ぶ人に向けた働き方の指針やライフプランを提案し、管理職・企業側はどのように対処すればよいかを指南してくれる。読後には、この新たな働き方が企業経営の改善につながる「魔法の杖」となる可能性を見出せるだろう(抜本的な改革が必要そうではあるが)。
「静かな退職」を批判的に捉えていた方にこそおすすめしたい一冊だ。働き方と雇用の課題の本質があぶり出され、新たな視点が得られるのではないだろうか。

本書の要点

・「静かな退職」とは、最低限の業務をこなしつつ、過度な奉仕を避ける働き方である。

日本における静かな退職の広がりには、女性の社会進出や柔軟な働き方の普及が影響している。
・静かな退職を成功させるためには、職場での良好な印象を保ちつつ、副業の基盤を築くことが重要となる。
・静かな退職者は、企業の経営環境を改善し、人材管理を進化させる存在である。



フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に3,300タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。

編集部おすすめ