レビュー
昨日と今日で言っていることが変わる上司にイライラ。働いていると、こんな経験をしたことがないという人のほうが少ないかもしれない。
本書によれば、「昨日と言っていることが変わる上司」には悪気はまったくない。「後知恵バイアス」という心理効果によって、人は過去の記憶を都合よく書き換え、「最初からそう思っていた」と信じ込んでしまうことがあるのだ。これは無意識に起こることで、本人は理不尽なことを言っているつもりはまったくない。
行動経済学の知識があれば、こんな事態に直面しても、「後知恵バイアスのせいかもしれない」と冷静に対応できるようになる。この場合であれば、相手の発言を記録する仕組みを作っておけば、「言った言わない」のトラブルを防ぐことができるだろう。また、「人間にはバイアスがあって、完璧ではないのだ」と理解しておくことも、余計なストレスを減らすことに役立つはずだ。
本書は、こうした心理的バイアスが私たちの日常やビジネスの現場にどう作用するかを、豊富な事例とともに解説している。人間の心理の癖を知り、怒りやモヤモヤを減らしたい、意思決定に役立てたいと思う人にとって、本書は有益な一冊となるだろう。
本書の要点
・人は選択肢が多すぎると決断を先送りしがちになる。行動経済学ではこれを「決定麻痺」と呼ぶ。
・事前にそれを予見していたかのように思い、自分の考えが正しいと考えることは「後知恵バイアス」と呼ばれる。これは、実際に起きたことによって、自分の記憶が書き換えられ、「そうなるとわかっていた」と思いたがる傾向だ。
・「現在志向バイアス」により、人は先の利益よりも目の前の利益を優先しやすい。長期的な目標を達成するには、短いスパンで具体的な計画を立てることが有効だ。
・自分の意見が常識的で多数派だと思い込む傾向は、「フォールスコンセンサス効果」と呼ばれる。この心理を理解していないと、自覚のないまま横暴な態度をとってしまいかねない。
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