レビュー
リンカン。もしくはリンカーン。
こうした足跡(そくせき)を入念にたどっていくのが本書である。リンカンを語るとき、避けては通れないのが当時のアメリカの「空気感」だ。フロンティア時代の開拓の情景を具に思い描ける人は少ないだろうが、本書のページをめくると、当時のアメリカの状況を、イリノイに広がる森の香りとともに克明に想像できるはずだ。
そして、もうひとつ忘れてはならないのが奴隷制である。現代の倫理観からすると、奴隷制が許されないのは明白だ。しかし、当時のリンカンが純粋な良心から奴隷制を批判したのかというとそうではない。政治的状況や合衆国の政体といった複雑な要素が絡み合う中で、リンカンは明確に奴隷制反対の立場をとるに至った。
指導者としてのリンカンの知性と生きざまは、現代に生きる我々にとっても、多くの示唆に富んでいるはずだ。
本書の要点
・アメリカ合衆国のフロンティア時代、ケンタッキー州に生を受けたのがリンカンである。リンカンは幼少の頃より知的好奇心にあふれ、教養を培いながら成長し、成人したのを機として独立する。
・リンカンが政治の世界に足を踏み入れた当初は、奴隷制に対して積極的に発言するようなことはあまりなかった。リンカンが本格的に奴隷制について論じはじめるのは、内戦の少し前である。
・奴隷制の是非をめぐりアメリカは南北に分かれて戦った。大統領・リンカンは、内戦鎮圧を目的としながら、最後には奴隷制について反対の立場を示した。
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