レビュー

変化を研究するのが歴史――この言葉を軸に展開する本書は、人類が「情報」を通じて真実と秩序をどう生み出してきたかを大胆に解き明かす。特徴的なのは、「情報はただの武器ではない。

むしろ、人類の情報ネットワークにおいては、自らが生き延びるため、真実を追求するだけでなく秩序を築くことも必要だ」という視点である。これは、神話と官僚制という二本柱が大規模社会を支えているという、本書の立論の背景とも重なる。
興味深いのは「人々は自分がその人物と結びついていると考えるが、実際にはその人について語られる物語とつながっている」という指摘だ。ブランド化された個人や組織への支持の実態が、情報によって構築されたイメージの共有にすぎないことを示している。さらに、「真実はほんのわずかでも秩序がたっぷりあれば、多くを達成できる」のが情報ネットワークであり、歴史上、多くの制度や社会運動は必ずしも高い真実性を求めなかった。
その一方で、進化論のように、真実を追究する動きが既存の秩序を揺るがした事例も、数多く紹介される。本書の最大の魅力は、こうした光と影を余すところなく解き明かし、“情報”が人類の興隆を支えつつ、ときに危険な方向へ導いたという、両面性を示している点にある。変化を生む原動力としての情報の役割と、人々をまとめる秩序の必要性が、歴史を織りなす二大テーマだと痛感させられる一冊だ。

本書の要点

・情報は真実を映し出すのではなく、誤りや虚構を通じて大規模社会を結びつける原動力となりうる。
・サピエンスは物語を通じて「共同主観的現実」を作り上げ、巨大なネットワークと柔軟な協力を実現してきたが、ときに誤った方向へ導く危険をもはらむ。
・文書と官僚制は情報管理を飛躍的に高度化させたが、不透明性や真実の犠牲を招く可能性がある。



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