レビュー
ビジネス効率性が高く、国際競争力でも常に上位にランクインするデンマーク。その背景にあるのは、最先端の技術や特別な経営手法ではなく、意外にも「雑談」かもしれない――本書『デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか』は、そんな驚きと納得を与えてくれる一冊だ。
著者の針貝有佳氏は、15年以上デンマークに在住し、現地の社会や文化を観察してきたデンマーク文化研究家である。本書の執筆に際しては、40人以上のデンマーク人にインタビューし、彼らが日々どのようにコミュニケーションを取り、成果を生み出しているのかを丹念に取材している。
本書によれば、デンマークの創造的なイノベーションや組織の成長を支えているのは、「3分の雑談」だ。勤務中にプライベートも含め、相手の近況や興味をサクッと知り、気軽な気持ちでアイデアを口にする。それが、仕事上で配慮につながったり、画期的なイノベーションの種になったりする。ちょっとした雑談が、メンバーの力を最大限に引き出す創造的な働き方を支えているのだ。
日本の職場環境で、すべてを一気に取り入れることは難しいかもしれないが、閉塞感のある職場に風を通し、チームの活性化を促す際に、本書の考え方は参考になる点が多い。職場の人間関係に悩む人、チームとのコミュニケーションを改善したいと思う人、イノベーションを生み出すヒントを探している人に、広く本書をおすすめしたい。雑談から始まる、新しい働き方のヒントが得られるはずだ。
本書の要点
・デンマークの職場のコミュニケーションでは、「軽い雑談」がコミュニケーションの手段として大切にされている。これが、高い効率性やイノベーションの創出を支えている。
・メンバーが自分のやりたい仕事をすればするほど組織も成長する。
・デンマークでは、仕事でもプライベートでも、人が人をつないでいく。人を介したマッチングがうまくいくのは、普段から良質な「雑談」と「対話」を重ねているからこそだ。
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