レビュー
あなたのもとに30代半ばのビジネスパーソンが相談にやってきた。新人教育に苦労しているという。
これは、本書の著者、ひきたよしあき氏のもとに実際に寄せられた相談である。伝え方のプロであり、大阪芸術大学、明治大学、早稲田大学などで教えるひきた氏に、かつての教え子が相談に来たそうだ。
ひきた氏のアドバイスをまとめると、次のようになる。そもそも今は「共通の話題」が存在しない時代である。年齢差のある教育係と新人では、話が合わなくて当然だ。共通の話題を見つけるのはあきらめて、「何も知らない私に教えてほしい」というスタンスで接し、相手の話をよく聞いて、面白がる様子を見せること。そして、相手が気持ちよさそうに話しているところを見極めて、そこを掘り下げなさい――。
本書の特徴は、具体的な声かけフレーズが豊富に紹介されている点だ。たとえば、ホウ・レン・ソウを軽視しがちな若手には、「君のために必要なんだ」と伝えることで、主体的に動くよう促す。雑用を嫌がる相手には「あなたのキャリアにとってこんなメリットがあるんだよ」と伝える。これ以外も、説得力あるフレーズばかりだ。
本書は、若手との距離を縮め、成長を支援したい人にぴったりの一冊だ。特に、パワハラになることを恐れてうまく指導できないと悩む人にとって、本書の提案するアプローチは大いに参考になるだろう。
本書の要点
・失敗を恐れて動き出せない相手には「あの仕事、終わった?」と声をかけてはいけない。「○○が分からなければ相談に乗るよ」と、相手が困っていそうな箇所を具体的に示して歩み寄りつつ、自分の失敗談を交えて仕事を教えよう。
・地道な作業や面倒なタスク、雑用などを依頼する際には「仕事の隠された意味(=相手の隠れた欲求を満たす内容)」と「仕事のメリット(=この仕事で身につけられること、得すること)」をセットで伝えるとよい。
・ミスの再発防止策を考える際には、ミスをした本人に今後の動き方を語らせるのが一流リーダーのやり方だ。
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