レビュー
近年、発達障害に関する認知度は確実に高まりつつある。学校や職場でも配慮が進み、診断を受ける人も増えている一方で、「発達障害は甘えではないのか」という誤解も根強い。
著者は、ADHDは確かに存在する「生まれつきの脳の傾向」であると明言する。同時に、過剰診断が疑われる状況に警鐘を鳴らし、まずはADHDの特性について正しく知ることの重要性を説く。精神医学の診断は本質的に〈問題〉に着目するものであるがゆえに、〈強み〉が見過ごされがちだ。この現状に対しても、鋭い指摘を加えている。
本書は、ADHDの背景にある脳の仕組みを丁寧に解説しつつ、その特性を歴史的な〈強み〉と捉え、個人の特性をどう活かすかという実践的な示唆を与えようとする。創造性や瞬発力、柔軟性といったADHDの側面は、現代社会でも活かしうる資質だということが、具体例と共に示される。
ADHDと診断された人は、全員が同じ傾向を持つわけでも、同じ対処法が有効なわけでもない。薬で集中力が改善する人もいれば、環境の整備や運動によって問題が軽減する人もいる。重要なのは、「ADHDがどんな〈強み〉になるか」を考えながら、自分に合った対応を見つけることだ。その際に、「他の人が持っていない工具箱を持っている」「あとはその使い方を知るだけ」と呼びかける著者の言葉は、力強い助けとなるだろう。
本書の要点
・程度の差はあるが、ADHDの傾向は誰にでもある。
・ADHDの特性は、歴史的に考えれば〈強み〉であった。だからこそADHDの傾向を持った祖先が生き残り、現代にもその傾向が引き継がれているのだ。
・ADHDの特性は、現代でも〈強み〉になりうる。大切なのは「ADHDがどんな〈強み〉になるか」を考え、自分の環境を変えようとしていくことだ。
フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に3,300タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。