レビュー

コンピューターが登場したことで、人類社会はどのように変容するのか? これまでいくつもの「予感」をもたらしてきたテーゼだが、本書はそうした私たちの「予感」を、「確信」に変える一冊といっていい。
コンピューターは単なるツールにとどまらず、私たち人間とは全く異質な、そして私たちを超える社会的・経済的な力を持った新たな社会の「メンバー」となる可能性があるという。

少し前ならよくあるSFの話として退けることもできたかもしれない。だがここまで生成AIが発達したいま、おそろしいほど現実味を帯びた話だ。
本書はAIが創出しうる「聖典」にも触れており、じつに興味深い。神を超えて、AIがその役割を担う日が来るのではないかという指摘は、AIが人間の手を離れた新たな「権威」として登場する可能性を想起させる。
加えて、AI自身がソーシャルメディアをコントロールし人々の感情や行動に影響を与えることについても警鐘を鳴らしている。そうして「真実」を超えた力を持った情報が、私たちの行動を決定づけてしまう。「情報革命」とは、単なる技術革新ではない。それは人類の意識や社会構造に、これまでにないような深い影響を与えるポテンシャルを有していることがわかる。
本書の魅力は、未来を恐怖のカタログとして煽るのではなく、読者に「いま選択肢を握っているのは誰か」を自覚させる点にある。AIの台頭が避けがたい以上、私たちが取るべきは消極的な傍観ではなく積極的なデザインだ。そのためには、どういう前提に私たちが置かれているのかを正しく把握する必要がある。迷っているゆとりは、おそらくもうあまり残っていない。

本書の要点

・コンピューターは「道具」から意思決定する参加者へ昇格し、人間抜きで情報を連鎖させ、社会の設計図そのものを書き換え始めた。
・民主主義の強みは誤りを正す自己修正メカニズムだが、コンピューターによる監視と自動化が、私たちの雇用と自由を脅かすだろう。善意・分散化・相互性・変化と休止という民主主義の特徴を柱に、柔軟性を高めることが不可欠になる。
・AIは情報の集中に長け、独裁制を後押しする。その力を過信すれば情報の支配権を握られる危うさを忘れてはならない。



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