レビュー
2024年の夏に開催されたパリオリンピックの結果を分析して明らかになったのは、日本の選手たちは個人競技よりも団体競技で成果を上げているという点である――。本書は、このような指摘から始まる。
そう聞いて、たいていの人は「協調性に優れた日本人は個人競技よりもチーム競技のほうが得意そうだから、納得の結果だ」と感じるだろう。
だが、団体とチームは別物だ。実際、バスケットボールやバレーボールといったチーム競技では、日本の選手たちは結果を残せていない。
さらに著者の指摘は続く。日本では団体的な働き方が主流だが、この働き方ではAIに太刀打ちできない、と。
本書の著者、辻秀一氏は、スポーツドクター・産業医として活躍する人物だ。応用スポーツ心理学をベースに、個人や組織のパフォーマンスを最適・最大化するためのメンタルトレーニングを展開しており、クライアントは、オリンピアンやプロアスリート、音楽家やパフォーマー、健康経営やWell-beingを実現したい企業までと幅広い。ベストセラーとなった著書『スラムダンク勝利学』を読んだことがある人も多いだろう。
本書では、そんな著者が、素晴らしいチームをつくるために必要な要素について教えてくれる。組織でチームを率いるマネジャーや、部下との関係に悩むリーダー、メンバーとの働き方に違和感を抱くビジネスパーソンが読めば、きっとヒントが得られるだろう。
本書の要点
・日本社会では団体的な働き方が主流だが、このような働き方では、VUCA時代を生き抜くのは困難だ。AIの時代が到来した今だからこそ、人間にしかできない「真のチームワーク」を実現できるチームづくりが求められている。
・パフォーマンスは「何をしているか」と「どのような心の状態で行っているか」の2つの要素によって決まる。つまり、内容と質、行動と心だ。機嫌がよい状態では、パフォーマンスの質が高まる。
・共有(コミュニケーション)なくしてチームは成立しない。特に、非認知的な内容の共有は個人間の関係性の質を高める。
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