レビュー

学歴ほど人を惹きつける話題はない。今も昔も、学歴は話題のネタであり、論争の火種にもなってきた。

「あそこの大学を出ている人は云々」「学歴とは頑張った証だから」「学歴など本来は意味のない指標だ」といった言説は、だれしもどこかで耳にしたことがあるのではないだろうか。SNSが浸透した現在では、学歴は高いインプレッションを稼ぐ話題でもあり続けている。なぜ学歴はここまで人を惹きつけるのか。もっといえば、これほど数多くの論争を経て、何が改善したのか。そもそも、何か明確なゴールを見通したうえでの議論だったのだろうか。
本書はこうした学歴論争を解きほぐしたうえで、新しい道を示そうとする。なぜ、日本でこれほど学歴が有効な指標になっているのか、それに一体どういったメリットがあったのか、既存の学歴論争を否定するのではなく、その歴史性を踏まえて丹念な考察を加えているのが特徴だ。
少子高齢化で人材が限られたこれからの時代において、従来のような学歴中心の人材雇用で仕事が回るとは思い難い。しかし、学歴で評価されることにも評価することにも疑問を覚えてはいても、実際のところ学歴なしにどう人を評価すればいいのかわからないという人も多いはずだ。そんな人にこそ、ぜひ本書を読んでほしい。最後のページを読み終わるころには、学歴について新しい視点を持っていることだろう。

本書の要点

・学歴主義とは、学歴が人の価値を測定する基準となる考え方のことである。

身分制度から近代に移る過程で、限られた資源の分配は身分ではなく「能力」によって決定づけられるようになった。
・優れた「能力」に対しては多くが分配される。その「能力」の良し悪しを決める客観的な基準として、「学歴」という指標が重視されるようになってきた。
・高度経済成長期では学歴によるメンバーシップ型雇用が採用された。しかし、少子高齢化というまったく異なる社会背景となった現在においてもそれが有効かには疑問が残る。



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