レビュー
スマホの恩恵と弊害については、すでにさまざまな場面で語られている。恩恵については言うまでもなく、スマホの登場により、わたしたちの暮らしは格段に便利になった。
では、弊害はどうだろうか。それについて記される代表的な書籍は、アンデシュ・ハンセンの『スマホ脳』だろう。スマホの利用時間が増えると、集中力の低下や情緒不安を招き、睡眠や生活に悪影響が出る。スマホ依存への警鐘を鳴らした一冊だ。
本書では、巨大テック企業の「闇」の部分にフォーカスを当てる。著者のピョートル・フェリクス・グジバチ氏は、かつてGoogleで人材開発などを担当した「中の人」。いわばビッグテックの光も闇も知り尽くした人物だ。そんな著者が、ビッグテックがスマホを通じてわたしたちの動向を監視し、そのデータを利用して自社の利益に転換している事実を指摘する。無料で便利なサービスには裏があるのだ。
また、わたしたちが総じて「スマホ漬け」になってしまうのにも理由がある。アプリやSNSには科学に基づいた巧妙なしくみが組み込まれているため、「ついハマってしまう」のは当たり前なのである。
とはいえ、わたしたちはもう「スマホ前」の生活に戻ることはできない。それを前提に、スマホと健全に付き合っていくにはどうすればいいのか。そう考えあぐねている人に、本書は格好の一冊である。自身の時間と人生を取り戻すためにも、一読をすすめたい。
本書の要点
・アテンションエコノミーは、「人々の注目・関心」そのものが価値を生み出すビジネスモデルだ。巨大テック企業は、スマホから個人データを収集・分析し、最適化した広告を届けることで巨額の利益を得ている。
・ウェブサービスやアプリは、「ハマる」ように設計されている。
・デジタルテクノロジーとは、自分の価値観や目的に合わせて適切な距離感で付き合うべきだ。そのために必要なことは「目標を持つ」「自分の大切なものを明確にする」「優先順位をつける」である。
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