【芸能界クロスロード】


 2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の主人公・秀吉の弟・豊臣秀長に仲野太賀(31)の起用が決まった。


 大河の王道、戦国モノに再び戻るが、主人公はあまり馴染みのない人物。


 共演者も小出しに発表されるだろうが、戦国ドラマの中核をなす秀吉・織田信長・徳川家康に誰を起用するか注目される。


 主演発表後、仲野は4月から始まった朝ドラ「虎に翼」に出演している。「この人が大河に主演する仲野」と認識してもらう絶好のタイミングだった。


 今年、俳優生活18年を迎えた仲野は山田孝之に憧れ山田と同じスターダストに直談判して所属。13歳で子役デビューを果たした。翌年、大河「風林火山」に出演。

以来、大河にはこれまで5本出演の実績がある。


■NHKが最大級の評価


 NHKは仲野起用の理由を「等身大の人物を泥臭くエネルギッシュに演じ、見る者の心をわしづかみにできる唯一無二の若手俳優」と最大級の評価。


 仲野の父は俳優の中野英雄。暴走族から俳優になり、顔の怖さから悪役として活躍してきた。


 仲野は2世俳優だが、「親の七光」を前面に押し出すどころか、以前の芸名は“太賀”と七光とは無縁だった。途中から「役者仲間を大切にしたい」という意味を込め“仲間”から“仲野”とした。

自ら築いた人脈で監督や俳優仲間からの信頼も厚い。最初から親を頼る様子は仲野にはなかった。歌手の宇多田ヒカルがヒット曲を出してから母親の藤圭子が騒がれたように、仲野も親の名前は後出し。こわもての父親がホームドラマでも活躍するようになってから、世間でも「太賀の父親」と認識された。むしろ、「子の七光」で父親への関心が高まった。もしも、父親が主役を張るスター俳優だったら、本人の意思に関係なくデビュー時から「中野の息子」と宣伝に使っていたはずで、俳優人生も変わっていたかもしれない。
悪役の多い父親の話題はほとんど出なかったことも仲野に幸いした。


 親交のあった東映ピラニア軍団のひとり、志賀勝も父親は悪役だった。仲野を見ていると、志賀の生前のこんな話を思い出す。


「同期が主役を父親に持つ(松方)弘樹は子役時代から別格扱い。常に取り巻きがいて最初から個室。俺はその他大勢の大部屋。

それが映画界のしきたり。羨ましいとも思わなかった。悪役の親父の七光など通用するはずもない。自力で這い上がった」


 父親が俳優であっても2世俳優に共通しているのは確実に遺伝子を受け継いでいること。現在、活躍を続けている2世俳優を見てもそうそうたる顔ぶれが揃う。今も映画、ドラマに欠かせない存在。


 重厚な演技で見る人をうならせる北大路欣也を頂点に、幅広い役をこなす中井貴一。「最近、父親(三国連太郎)と遜色ない存在感を出している」(映画関係者)と引っ張りだこの人気になった佐藤浩市高嶋政宏・政伸、柄本佑と時生の2世兄弟俳優も活躍中。千葉真一の息子・新田真剣佑・真栄田郷敦兄弟も頭角を現してきた。


 女優に目を向ければ歌舞伎役者を父に持つ寺島しのぶ松たか子奥田瑛二の次女・安藤サクラもすでに実力派女優と認知されている。

3月で終わった朝ドラ「ブギウギ」のヒロインを好演した趣里の両親は水谷豊伊藤蘭。これまで2世俳優を一様に「親の七光」と時には揶揄した時代は終わりを告げている。