過去に類を見ない異常な選挙戦だ。9候補が乱立し、カオスな展開になっている衆院東京15区補欠選挙(28日投開票)。

候補を擁立した「つばさの党」陣営が他陣営の街頭演説に“凸撃”し、大音量で演説をぶつ行為が「選挙妨害」と批判を招いている。特に標的になっているのが、小池都知事が支援する作家・乙武洋匡陣営だ。度重なる妨害を受け、逆に妙な存在感を示しつつある。


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 選挙妨害と受け止められかねない行為に出たのは、つばさの党だけじゃない。政治団体「日本保守党」新人の飯山陽陣営が24日朝、JR亀戸駅前であった乙武陣営の演説会に“乱入”。乙武陣営関係者が応援演説していた場所に選挙カーを横付けした飯山陣営は、大音量で「飯山陽」を連呼し続けたのだ。


 乙武陣営で「都民ファーストの会」所属の内山真吾都議はX(旧ツイッター)で《先に我々が駅頭で演説をしていると、(飯山陣営が)前に立って挨拶を始め、選挙カーを付け、マイクで演説を開始》と投稿。添付された動画を見る限り、乙武陣営の演説がかき消されており、妨害と見られても仕方ない状況だ。


 ある地方議員によると、「街宣の場所が重なった場合、後から来た陣営が先に来た陣営に配慮して、別の場所に移動するのが暗黙のマナー」。飯山陣営がそうしたマナーを無視したのは明らかだ。乙武陣営への妨害を巡っては、日に日に激しさを増している。16日の告示日には、つばさの党陣営が乙武候補の第一声の場所に現れ、大音量で演説。

駆けつけた小池都知事に対し「おい小池! こんないい選挙カーに乗って庶民の気持ちなんか分かるのかよ!」などと批判を展開した。21日には、警視庁が、乙武陣営スタッフを突き飛ばした男を暴行容疑で現行犯逮捕。23日に公職選挙法違反(選挙の自由妨害)容疑に切り替え、男の身柄を送検した。


■「負けないで」の応援の声が多数


 この異常事態に、選挙区の東京・江東区の大久保朋果区長が〈区民の皆さんの安全確保を深川、城東、湾岸警察署にお願いしています〉と異例の声明を発表。妨害の的にされている小池・乙武陣営はさぞ困っているかと思いきや、そうでもない。逆に、妨害に対する同情が集まり、追い風が強まっている状況だという。

陣営関係者はこう言う。


「今回の妨害が報じられたり、SNSで話題になることで、ウチの陣営はかなり注目を浴びています。有権者からは『あんな妨害に負けないで』といった声が多数、届くほどです。それもあって、手応えは相当いい。直近の複数の情勢調査では、立憲民主党の候補に次いで2位につけている。逆転が視野に入ってきた」


 何が影響するか分からないのが選挙だ。

とりあえず、妨害はもうやめるべきだろう。