トランプ米大統領が「相互関税」の上乗せ分を90日間停止すると発表。寝耳に水だった日本政府は右往左往だが、この国の経済を占う上で今後の3カ月間が勝負の分かれ目となる。

石破政権は来週にも交渉役の赤沢経済再生相を米国に派遣し、関税交渉に臨む方針だ。


 問題は猶予の期限となる90日後。7月予定の参院選とバッチリ重なるのだ。参院選の日程は現在、公示が7月3日、投開票は海の日3連休の中日となる7月20日が有力視されている。この想定通り参院選が実施されると、猶予期限が切れる頃には、すでに選挙戦は本番を迎えていることになる。


 これが石破自民党にすればバッドタイミング。自民の選挙は業界団体に支えられ、とりわけ参院選の全国比例には組織内候補が乱立する。交渉過程で特定の団体に“痛み”を強いることにでもなれば、組織票の動きに直結しかねないからだ。


 中でも雲行きが怪しいのは「最大の票田」とも呼ばれる農業票だ。トランプ氏本人が「日本のコメの関税は700%」とわめき散らしているのは、さておき。日本との交渉責任者に指名された米通商代表部のグリア代表は「日本の農産品市場への市場アクセスをもっともっと増やしたい」と、8日の連邦議会上院の公聴会で明言。農産品の市場開放に意欲を示した。


 過去30年、日本のコメ輸入量は年間77万トンに設定され、さらに主食用は年10万トンの枠を設けている。これらの措置は、トランプ政権が問題視する非関税障壁となり得る。


「米国の要求通り、市場開放でコメなどの農産品を差し出せば確実に農業票を失う。かといって農業の生産者を守れば輸出産業など毎年、献金を提供する幅広い企業が24%の高関税で打撃を受けることになり、黙っていません。どちらに転んでも参院選は地獄です」(自民党関係者)


 党内では参院選リスクを避けるため、「さらなる延期を懇願するしかない」との声も上がっているという。石破自民のわがままに付き合うほど、トランプ氏はお人よしではない。


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