石破政権の命運を左右する参院選が迫る中、首都決戦である東京選挙区の顔ぶれがほぼ出揃った。擁立が難航した自民党の2人目は競泳の五輪金メダリストで、日本水泳連盟会長の鈴木大地氏(58)。

バサロ泳法を世に知らしめた初代スポーツ庁長官だ。日本維新の会は衆院鞍替えの当てが外れた音喜多駿前政調会長(41)が出戻り。勢いのある国民民主党は強気で、元NHKアナウンサーの牛田茉友氏(39)ら新人2人を公認した。改選数6に加え、非改選の欠員補充を合わせた計7議席を争う「合併選挙」は大乱戦となること必至だ。


 自民の2人目は、これまた鞍替えに失敗した丸川珠代元五輪相(54)の後釜。「党本部の木原誠二選対委員長が主導し、『女性枠』として候補者調整をしていた」(自民党関係者)が、ことごとくしくじった。


「本命は離婚後にタレント復帰した菊川怜さん(47)でした。東大卒の才媛という点で丸川氏とスペックが重なる上、3児を育てるシングルマザーであることから、女性票の掘り起こしにつながるとの算段だった。木原氏とは東大のテニスサークルつながりですが、菊川さんは頑として首をタテに振らなかった。NPO法人代表理事の渡部カンコロンゴ清花さん(34)も木原推しでしたが、過去の安倍批判を蒸し返されて頓挫。旧岸田派の後輩にあたる浪人中の大沼瑞穂元参院議員(46)も浮上したものの、立ち消えた」(前出の関係者)


 そうこうしているうちに、裏金事件で東京都連会長の座を追われた萩生田光一元政調会長が復権に向けて始動。「安倍派枠」を維持せんと巻き返されたようだ。


「参院東京の2枠のうち、1つは旧安倍派の指定席化してきた。旧岸田派にかすめ取られるわけにはいかないと、知名度の高い鈴木氏の擁立を急ピッチで進めたようです。鈴木氏は旧安倍派OBの森喜朗元首相のお気に入り。その線でスポーツ庁長官に引っ張られた。大型選挙のたびに名前が挙がっては消えてきたのは身体検査を嫌がったともっぱらでしたが、そうした問題は年を重ねてクリアになったようです」(都連関係者)


■組織票頼みの自民・武見敬三氏がはじき飛ばされる可能性も


 今回の首都決戦はかつてないほどの激戦だ。自民の1人目は6選を狙う現職の武見敬三前厚労相(73)。公明党は山口那津男元代表の後継に新人男性(40)を立てる。立憲民主党は2期目をうかがう塩村文夏議員(46)と、繰り上げ当選して1年ほどの奥村政佳議員(47)を公認。共産党は3選を目指す吉良佳子議員(42)だ。主要政党だけでも9人が出る。


 選挙予測に定評のある政治評論家の野上忠興氏はこう言う。


「候補者乱立によって情勢調査が複雑になり、精度を欠いていると聞きます。

自公立国共が1議席ずつ取り、残り2議席を4人が争う展開になるのではないか。鈴木擁立は浮動票が国民民主党に流れ込むのを抑える狙いでしょう。期待ほどの効果が出なければ国民民主党が2議席を取り、組織票頼みの武見氏がはじき飛ばされる可能性もある」


 少数与党の石破政権にとって、参院選は政権選択選挙と同じ意味がある。 


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 鈴木大地氏にはスポーツ庁長官就任をめぐり“舌禍”がある。関連記事【もっと読む】で詳しく報じている。


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