「見取り図じゃん」(テレビ朝日系)の「この7人だからこそ言える会」が5月4日、11日深夜の2週にわたって放送された。同企画は、MCの見取り図、さらば青春の光、ニューヨーク、相席スタート・山添寛が「仕事や私生活にまつわる本音トークを語り合う」というシンプルなもので、2023年から年1回のペースで放送されている。
まずは、前回の発言と各組の1年のトピックを振り返って近況を確認。とくに2度のスキャンダルをはねのけゴルフ番組で活躍する東ブクロが「マスターズゴルフ2025 開幕直前SP」(TBS系)に出演するまでになり、ギャンブル好きの山添がドラマや映画に顔を出しつつバラエティーに引っ張りだこという現実が、今の時代をもてあそんでいるようで痛快だった。
他方、もっとも目を引いたのが中堅芸人としての悩みだ。後輩に対するアドバイスが老害になっていないかと案じる一方で、ドラマ脚本でも才能を発揮するバカリズムのような先輩には圧倒的な仕事量とクオリティーを見せつけられる。それぞれがリアルな心情を語る中で、ひときわ印象に残ったのが見取り図・リリーの言葉だ。
「10年前にさ、例えばさ、『YouTube始めようと思うんですけど』って言ったら、俺らだったら『やめとけ』って言うやん。けど、今考えたら、そのとき『やっといたらええから』ってなる。とか考えたら、(後輩に)何も言えへんよな」
■背景に配信メディアの台頭
彼らの中でもっとも後輩にあたるのがニューヨーク。2010年のコンビ結成当時は、今ほど日本でスマホやSNSが普及しておらず、テレビスターを目指す芸人が多かった。しかし、2010年代後半に入り、YouTubeに参入する芸人が続々と増えていく。
カジサック(キングコング・梶原雄太)、オリエンタルラジオ・中田敦彦などの芸人はもちろん、霜降り明星、かまいたち、江頭2:50といった面々もチャンネルを開設。コロナ禍では、チョコレートプラネットが「香水/瑛人 MV再現(covered by 瑛肩)」を大バズリさせ、芸人がYouTubeで注目を浴びることに違和感を覚えなくなった。
そんな時期、地道にYouTubeラジオを更新し、バラエティーで霜降り明星・せいやに「第7世代に入れてくれ!」と頼み込み、賞レースで決勝進出を果たすなど、泥くさく全方位に挑んでいったのがニューヨークだ。一方で、さらば青春の光は賞レースに出なくなった2019年以降に仕事を増やし、YouTubeチャンネルでヒット動画を連発していく。
山添は2020年あたりから“クズ芸人”のくくりで脚光を浴び、見取り図は東京進出する前年2021年からバラエティー露出を増加させた。つまり、彼らは配信メディアが実質的に台頭し始めた2020年前後にブレークしている。そんな背景もあり、今のアラフォー芸人は上にも下にも複雑な思いを抱きやすいのかもしれない。
(鈴木旭/お笑い研究家)
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後輩へのアドバイスの難しさを語った見取り図だが、その活躍ぶりを見ていると、後輩としてはアドバイスが欲しくなるのもうなずける。関連記事【もっと読む】「見取り図」は漫才・コント・バラエティー番組…走攻守揃った万能プレーヤー…では、見取り図の「ユーティリティープレーヤーぶり」を伝えている。