【テレビ局に代わり勝手に「情報開示」】
いらないです。ハイ、以上…で済ませたくなりますが、それだとあんまりなのでちゃんとご説明しましょう。
私が若い頃、つまり20世紀には「できるだけ緊迫感のある場所から中継する」のが当然という時代でした。台風なら、波がザブーンと押し寄せる防波堤から中継するとか、強風で飛ばされそうになりながら絶叫中継とかすると、局に戻ってから「エヂカラが強かったよね。迫力満点で、最高でした」と上司に褒められたりしたものです。
■「台風中継はいい天気で、連休の渋滞中継は車がスイスイ走っている」が大半
じゃあ、記者はいつも危険な目に遭っていたのか? というとぶっちゃけそんなことはありませんでした。「狙っても外す」ことがほとんどだったからです。大雨が降っているはずが、現場に着いたら晴れていて話すことが無かっただとか。波がベタ凪で、後ろに小学生が群がってピースされちゃったとか。だいたい、天気というのは思った通りにいかないんです。私の経験からいうと、「台風中継はいい天気で、連休の渋滞中継は車がスイスイ走っている」というケースが大部分ですね。
しかし今や時代は変わりました。
いまや事件事故の決定的な瞬間が必ず防犯カメラに映ってます。それだけ街中に無人の監視カメラやドラレコがあるわけだし、誰もがスマホを持っているから、視聴者が撮影した映像をお借りしたほうが絶対迫力がある。「暑さ」や「天気の荒れっぷり」を表すために記者中継をする意味なんてもうないのに、それでもやっている理由といったら「尺を埋めるため」ということしか無いですよね。
いっそやるなら、最新の機材…高性能カメラとかドローンとかロボットとかを使って、「一般人じゃなかなか撮れないような衝撃の天気映像」の生中継に挑戦してもらいたいものです。「ウチは他局とは迫力が違うもんね」と、胸を張って自慢できるようなニュース番組が、あったらいいなと思いますけどね。
(鎮目博道/テレビプロデューサー、コラムニスト、顔ハメ旅人)
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「テレビ番組の"裏かぶり"ルール」や「街頭インタビューの採用率」など、テレビさまざまな疑問に答えている著者の連載は【関連記事】に網羅している。