【あの人は今こうしている】
EPOさん
(ミュージシャン/65歳)
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コロナ禍以降、日本の爽やかなシティーポップが海外で大人気だと話題になった。「う、ふ、ふ、ふ、」などをヒットさせたEPOさんも、シティーポップを代表するミュージシャンだったが、今どうしているのだろうか。
「海外のシティーポップ人気は、あまりピンときていなかったんです。ところが、この前、JASRACから入った印税を見て『こんなに入るの?』とビックリ。再リリースされている私の古いアルバムが、売れているからでもあるとは思うのですが」
京王線下高井戸駅から徒歩5分の音楽スタジオ「G-ROKS」で会ったEPOさん、まずはこう言った。
「私のホームページにも、米国のDJらから『キミの曲をよくかけて盛り上がっているよ』『イベントに出てほしい』といったメッセージが届きます。どんな時代に聴いても、絶対に『いい!』と言ってもらえる音楽をやってきた自負はあるのですが、やはり海外の方からも応援されるというのはうれしいですね。シティーポップは米国の音楽の影響を受けた人たちが作った音楽だから、海外の方にも受け入れられやすいのかもしれません」
EPOさんはずっと音楽を続け、今年はデビュー45周年。10年ぶりにポップスのアルバム「EPOFUL」を9月にリリースする。今年前半はレコーディングで忙しいそうだが、それにしてはよく日焼けしている。
「東日本大震災直後に、以前から気に入っていた沖縄に、夫の両親と移住したんです。畑でキャベツやダイコン、トマト、ゴーヤーなどの野菜や、マンゴーやバナナ、パッションフルーツなどの果物を育てています。海で泳げる5~11月は、夕方になると毎日のように泳いでいます。夕方5時に仕事をあがり、キレイな海で泳ぎ、温泉施設で塩を落として帰るという忙しくも幸せな時間の流れのなかで生活しています。
休みもなく働いて身も心もボロボロだった売れっ子時代。今は楽しいことしかしない
夫は同い年の俳優・宮川雅彦さん。43歳のとき、ミュージカルで共演して知り合い、2008年に結婚。宮川さんは現在、EPOさんのマネジャーも務めている。
「ずっと結婚はしないと思っていたのでまさかするとは。結婚を決めた自分に驚いています(笑)。夫は周りに流されない、まっすぐで優しい人。私の話をよく聞いて、応援してくれる人です」
音楽活動をしながら、06年から4年間、米マイアミにある「バーバラ・ブレナン・スクール・オブ・ヒーリング」に夫とともに留学。全米催眠療法協会認定催眠療法士などの資格を取得し、帰国後は資格を生かしてカウンセリングなども行っている。
「実母との葛藤や『売れる音楽を作らなきゃ』というプレッシャーなどから、20代の終わりに体を壊してしまって。それをきっかけに私自身がカウンセリングを受け、自分のものの考え方と向き合いました。すると、どんどん心が楽になり、体調も良くなっていったんです。
さて、EPOさんは、世田谷区の都立松原高校在学中、音楽プロデューサーにスカウトされ、東京女子体育大学進学後の80年、シングル&アルバム「DOWN TOWN」(RCAレコード)でデビュー。「PARK Ave.1981」「土曜の夜はパラダイス」「う、ふ、ふ、ふ、」などがCMソングや「オレたちひょうきん族」のエンディング曲に起用され、ヒットを連発した。
「当時はやりたい音楽が自由にできず、休みもなく働いて月給8万円。なぜ私ばかりがこんなに働かなくちゃいけないのか、と身も心もボロボロでした。でも、今は考え方が変わりました。当時は私自身が“EPOはこうでなきゃいけない”と思い込んでいたんです。20代後半に英国へ行ったり、40代で米国で学んだりしたことで、自分の人生を自分で選択することに恐れがなくなりました。今は楽しいことしかしていない(笑)。45周年ライブでは私だけでなく、集まったファンのみんなも、健康で45周年を迎えられたことを、一緒にお祝いしたいと思っています」
9月19日「LINE CUBE SHIBUYA」(東京)、21日「サンケイホールブリーゼ」(大阪)で、「EPO ベスト・ヒット・ライヴ 45th Anniversary PARTY!!」を行う。
(取材・文=中野裕子)