【今週グサッときた名言珍言】


「漫才協会にも入りました」
(伊原剛志/フジテレビ系「ぽかぽか」7月28日放送)


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 還暦をすぎても若々しく精力的に活動を続けている俳優の伊原剛志(61)。彼は近年、川平慈英と「なにわシーサー's」というコンビを組んで漫才に挑戦している。

「つよっさん」を名乗りボケ担当だ。


 片手間にやっているわけではない。プロの劇作家・構成作家に頼み、漫才の演出をつけてもらうため、大阪まで出稽古にも赴き、昨年12月の“デビュー”以来、忘年会や新年会、会社の創立100周年記念といった、いわゆる営業もおこなった。さらにはあの浅草東洋館の舞台にも立ったのだ。


 そんな伊原の本気度が伝わる驚きの情報を明かした一言が今週の言葉だ。


 彼らが漫才を始めたきっかけは、約4年前の舞台共演だった。久々に再会した2人は、「そろそろオレらもいろんな経験を積んだし、何か2人でおもしろいことできるんちゃう?」(NHKラジオ第1「まんまる」2025年7月18日)と話が盛り上がり、芸人が芝居に挑戦することはよくあるが、その逆で役者が漫才を本格的にやることはほとんどない。だったら、自分たちがやってみようと思い立ったのだ。


 伊原がお笑いの分野に挑戦するのは初めてではない。16年には、桂雀々に弟子入りし、「雀々や剛々」の高座名で落語家デビューも果たしているのだ。きっかけは1996年度後期のNHK朝ドラ「ふたりっ子」で桂枝雀と共演したこと。彼の弟子の雀々の高座を聴きに行き「勉強したい」と手紙を書き弟子入りした。


 もちろん、お笑いの分野だけではなく、海外の映画にも積極的に出演し、全編フランス語の映画にも挑戦した。自らのYouTubeチャンネルも始めたが、その企画タイトルは「伊原剛志のやりたい放題」。まさに彼の生き方は「やりたい放題」そのものだ。


 チャンネルでは、かっこいいと思っている人物として矢沢永吉を挙げ、「カッコよく生きるためには、自由であり夢を追い続けるってこと」(21年7月6日)と語っている。


 伊原は学生時代、体育教師になりたいと思っていた。だが、在日韓国人3世だったため、教員免許は取れても日本国籍がなければ採用されることは現実的には難しかった。もちろん選挙権もなかった。そんな本来なら当たり前の「自由」が制限されていた経験も、自由に挑戦を続ける原動力になっているのかもしれない。


「そもそも僕自身、挑戦することが好きなんですよ」(宝島社「田舎暮らしの本Web」24年12月14日)


(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)


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