今年の8月は戦後80年ということで、テレビ各局も戦争特別番組に力が入っている。見逃せないドラマやドキュメンタリーを探した。


 NHKで注目は「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」(16、17日総合午後9時)だ。1941(昭和16)年夏、各界の優秀な頭脳を集めた首相直轄機関「総力戦研究所」が対米戦のシミュレーションをしてみると、結果は日本の壊滅的敗北と出た。猪瀬直樹のノンフィクションをドラマ化したもので、軍部や政府は勝つ見込みがないのを承知で、国民を戦争に引きずり込んでいったのだ。池松壮亮が避戦を主張する若きエリートの苦悩を好演している。


「八月の声を運ぶ男」(13日総合午後10時)は、全国を回って被爆者の声を集め続けたジャーナリスト(本木雅弘)と、ある被爆者(阿部サダヲ)との出会いを描いた。その「声」には大きな謎があった。


 空襲で壊滅した大阪で、復興に立ち上がる町工場の一家の「大阪激流伝」(31日総合午後9時)は、“工場のオヤジ”を演じさせたら日本一似合う堤真一が主役。


 日中・太平洋戦争の映像・資料を多く持つNHKのドキュメンタリーは、やはり出色である。戦争の3年8カ月を1年ごとに追体験していくシリーズの最終回「新・ドキュメント太平洋戦争1945終戦」(15日総合午後7時30分<前編>、10時<後編>)は、敗戦が人々にどれほどの苦難と悲劇をもたらしたか。高細密カラー化された映像は戦争の不条理を強く訴える。


 Eテレの無条件降伏を受け入れるための御前会議を再現した「昭和天皇 終戦への道~外相手帳が語る国際情報戦~」(16日午後11時)、「戦没者の妻たち 長い戦後」(30日午後11時)もおすすめ。


 最近は8月15日の「戦没者追悼式」の生中継でお茶を濁してきた民放も、今年は特番を編成した。

テレビ東京系は「池上彰の戦争を考えるSP」を10日正午から、テレビ朝日系も池上彰を起用して「ニュースそうだったのか!!3時間SP」を16日午後6時56分から。


 綾瀬はるかが続けているシリーズ「『戦争』を聞く」の今年は、「なぜ君は戦争に?」(TBS系14日午後10時)だ。アメリカ人にとって原爆投下とは何だったのかを聞く。日本テレビ系は桜井翔をキャスターに「真相報道バンキシャ!特別編“終末時計”を早める世界のトップたち」(15日午後7時)を放送する。


(コラムニスト・海原かみな)


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