「総理の暴走だ」──自民党内で石破茂首相の独断に反発が広がっている。企業・団体献金の見直しを巡り、党の方針を急転換。

立憲民主党の野田佳彦代表の提案を受け入れ、党内議論を経ることなく、規制強化に前向きな姿勢を打ち出したからだ。


 企業・団体献金について自民は「禁止よりも公開」を訴えてきた。通常国会で禁止法案を共同提出した立憲や日本維新の会、参政党など野党5会派に対し、自民は献金を存続させた上で透明性を高める法案を提出。公明党と国民民主党が①献金を受領する政党支部を都道府県連に限定②同一団体への献金額を年間最大2000万円に制限──と規制強化の“折衷案”をまとめても、石破は「自民として受け入れるのに非常に厳しいところがある」と譲らず議論は平行線をたどった。


 結局、自民は「今年3月末までに結論を得る」との与野党合意を反故にし、何ひとつ結論を得られないまま、通常国会は閉会。ところが、参院選大敗を受け党内で「石破おろし」が吹き荒れるや、石破首相は態度を一変させた。


 4日の衆院予算委員会で野田氏が公・国の折衷案を軸に協議を呼びかけると、石破首相は「党首同士で真摯な議論をすることに大きな意味はある」とあっさり便乗し、7日には「今後、真摯に議論していく」と立憲との協議に前のめり。自民党の森山裕幹事長らに献金の受け皿で7000を超える政党支部の実態調査を指示した。


 事前の根回しや幹部とのすり合わせは一切なし。積み上げてきた党内議論や「透明性と公開」の方針をすっ飛ばし、勝手に規制強化へ突き進んでいるのだ。この独断専行が党内の“新たな火種”となっているが、むろん石破首相の豹変には裏がある。


「石破おろしの背後で糸を引くのは旧安倍派の裏金幹部たち。

逆立ちしても裏金事件を総括できない彼らを向こうに回し、『政治とカネ』に取り組む姿勢をアピール。退陣を迫る側を“悪役”に仕立てて世論を味方につけ、退陣圧力をかわしたい。わが身かわいさのポーズです」(自民党関係者)


 つまり企業・団体献金の見直しは、しょせん党内政局の駆け引き材料に過ぎないということ。君子ヅラの石破首相も、イラつく面々も、本気で裏金事件に反省しているそぶりは見えない。


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